「じゃ、これ読んでみます?」 マヤは水桜由紀の新刊を取り出した。
「水桜由紀? 五年前ぐらいはよく読んでたけど、E計画にかかりっきりになって
からは読んで無いわね……じゃ久しぶりに読んでみようかしら」

「この新作のヒロイン 先輩に少し似てるんですよ」
「私に? そんな事言われると気になるわね じゃ借りて行くわね」
リツコはマヤから受け取った小説を鞄に入れた。

数分後

「さて、終わったわ じゃお先に失礼するわね」
「お疲れ様です」
リツコが席を離れた次の瞬間、リツコのメールボックスに冬月からのメールが届いていた


「恋愛小説家・ゲンドウ」

この作品は、映画”恋愛小説家”とエヴァのリミックスFF(ファンフィクション)です。


第6話「偽りの仮面(中編)」

作 尾崎貞夫


AM9:00

「ふぅ……」 ゲンドウは両肩をほぐしながら司令室に向かっていた。
余裕のよっちゃん(謎)の筈だったのについ昔を思い出していたりしたものだから、
日も暮れてから慌てて続きを書いたものだから今朝方までかかってしまったのであった。

「ん?」 ゲンドウは通路に紙屑が落ちてるのを見て屈み込んだ。

「この通路は朝から大勢の職員が通った筈なのに、誰も拾おうとはせんのか……」
ゲンドウはぶつぶつ言いながら紙屑を手にして歩きはじめた。

数分後 ゲンドウはカードを使って司令室の扉を開けて、
三日間主がいなかった司令室に足を踏み出した。

数分後

「休暇をとった割には疲れているようだが? やはり男の一人暮らしじゃ体調を管理出来ん
ぞ……私も人の事は言えんがね……」
冬月がここ数日の報告書等をゲンドウの机に置きながら言った。

「予定外のアクシデントはいつでも起こるものだ……」
子供の頃夏休みの計画表を初めて作った時から、
全ての物事を計画的に進めて来たゲンドウにとって、冬月の指摘は不愉快だった
(無論ユイとの事は計画的どころか振り回されていたのだが……)

「次の使途はすぐには来ないって事になってるが、それもわからんか……ん?」
冬月はゲンドウが机の上に拾った紙屑を置いているのに気づき覗き込んだ。

「碇……おまえが拾ったのか……私も気づいてはいたんだが、膝が痛くてな……」
冬月が座らないのはセカンドインパクトの動乱期に膝を痛め、
座っていると痛く 立っている方が楽だからとの話をゲンドウは思い出した。

「経費節減で掃除夫を減らしたからな……気にする事じゃ無い……」

「ここ数日膝も痛むし、今日は昼から休みを取らせて貰う事にするよ」

「今日は青葉二尉と赤木博士が休暇か……」

「そうそう、伊吹君に聞いたんだが、今日は赤木君は見合いらしいぞ」
冬月は発令所に向かいかけたが、足を止め振り向かずに言った。

「…………」 冬月はゲンドウの反応を期待していたが、ゲンドウは黙して語らなかった。



リツコは朝早くから第二東京市に向かうリニアに乗っていた……

「ふぅ……確かに私に似てると言えば似てるわよね……」
リツコはマヤから借りた小説から目を離してため息をついた。

水桜由紀の新刊の主人公は 前作の主人公の娘で 母娘ともに天才科学者として
世に知られていると言う設定であった。 
そのまんまであるが、リツコは前作を読んで無かったので気づいてはいなかった。

「この小説……前作と一緒に買ってみようかしら……」
速読術をマスターしている為、一時間半で読み終えたリツコは小説を鞄に入れようとして
手を止めた。

「豊中出版? 何か覚えがあるわね……何だったかしら……まぁいいか」
リツコは持参のアイマスクを付けて仮眠に入ろうとした。


車両と車両を繋ぎ目から小さいながらも定期的な音が聞こえていたので、
リツコは睡魔に誘われるまま眠りの園へ誘われた。

そしてリツコはこれまで意識的に忘れようとして来た事の夢を見た。

2010年……

ゲヒルンに入社し、研修を終え第三新東京市の地下ジオフロント内にある
技術開発部に初めて出社した時の事であった。


リツコは道に迷い、警備員に呼びかけられ発令所への道を尋ねた。
「迷路ね ここ」 迷っている間にも今日下ろしたての白衣に埃が纏ってしまい、
服をはたきながらリツコは冷淡な声で言った。

「発令所なら 今、所長と赤木博士が見えてますよ」
警備員は手に握っている端末を操作して言った。

リツコは警備員に道を聞き、まだ薄暗い第一発令所に足を踏み入れた。

50メートル程下には 実母である赤木ナオコ……
そして母から名前は聞いた事のある碇ゲンドウの二人の姿が見えた。


「本当にいいのね?」

「ああ 自分の仕事に後悔は無い」

「嘘! ユイさんの事が忘れられないんでしょっ」

白衣を着た二人は 少し間を空けて相対し、表情も変えずに話していた。

「でもいいの…… あたしは」
ナオコは少し強ばらせていた顔を笑みに代え、そっとゲンドウに覆いかぶさっていった。

リツコは気位の高い母が何故あのような男と
上司と部下以上の関りを持つのか不思議でならなかった。

それもリツコが二人の会話の意味に気づいて無いからである……

先程の問いかけと答えはゲンドウが水桜由紀の名で発表した作品の
原稿料・印税共にユイ基金としてセカンドインパクトで親を無くした子供の奨学金に
する事の確認であった。

大学時代のサークルの部長であった吉田美幸の紹介でゲヒルンに誘われたナオコは
ゲンドウが恋愛小説家としてデビューしてからの影のマネージャーでもあったのだ……

一方的にナオコがゲンドウを誘惑もしていたのだが、ユイを亡くしたばかりのゲンドウに
そんなつもりは毛頭無かった。 また、唯の道具にするにはナオコは有能すぎた。


その後、人工知能マギの制作が終わる頃謎の変死を遂げた事も
リツコにとっては碇ゲンドウと言う人間を信じる事が出来ない理由であった。


リニアが目的地に近づき軽く制動がかかった時、リツコは目ざめた。

「母さんの夢なんて……何年ぶりかしらね」
リツコはアイマスクを鞄に入れながら呟いた。


「今日の見合いの相手はどんな仕事してるのかしら……聞いて無かったわね」
リツコはリニアを降りて駅の構内を歩きながら呟いた。


三時間後…………

「まったく叔母さんにも困ったものよね……いくらなんでも7つも年上だなんて……」
リツコはぶつぶつ言いながら駅ビル内の書店に足を運んでいた。

見合いの内容は……あえて記す程の内容では無かったようだ。

「えーとどこにあるのかしら……」
リツコはハードカバーの小説を置いていそうなコーナーを探して店内を歩きはじめた。

「マヤに帰さないといけないし、今日読んだ本も買っておいた方がいいわね……」
学術書以外の本を探して本屋の中を巡るのもリツコにとっては久しぶりであった。

「確かこのあたりみたいだけど……」 マヤに借りた本の背に書かれていた豊中出版
のハードカバーシリーズを見つけはしたのだが、肝心の水桜由紀の作品が見当たらないのだ。

「店員さんに聞いてみようかしら……もうすぐ時間だし」
リツコは早足で店員の元に向かった。

「すみません 水桜由紀の……」
そこまで言いかけてリツコはレジの横の特設スペースに
今日読んだ本と同じ物があるのを見つけた。

「何かおさがしですか?」

「いえ……ありましたのでいいです」
リツコは店員のへのあいさつもそこそこに、特設スペースに水桜由紀の作品が
並んでいるのを呆然として見ていた。

「こんなに本が出てるなんて……すごいわね」
リツコは簡単に目当ての本二冊を見つけて取り上げた。

「ユイ基金5周年フェア? 基金と何の関係があるのかしら」
ユイは表紙につけられた帯を見て呟いた。

「いけない リニアの時間忘れてた」
リツコはあわてて先程の二冊を店員に渡して紙袋に入れてもらい、
駅のホームに向かって駆け出した。


「ふぅ……あわてたわね……」
リツコは自動販売機で買ったアイスティーを飲みながら、
まだ動機の治まらぬ胸をなで下ろしていた。

少ししてリニアは速度を上げ、列車の揺れが感じられなくなったので
リツコは本の入った紙袋を空けた。
紙袋の中には先程買い求めた水桜由紀の本二冊と小冊子が入っていた。

「ユイ基金 5周年記念 読書感想文」
と小冊子には書かれていた。

リツコは先程なぜか気になっていたせいか、小冊子をめくり読みはじめた。

数分後……

「凄いわね……原稿料も印税も全部基金にしちゃうなんて……どんな女性(ひと)
なのかしらね……けど、原稿料も印税も基金にしてるって事は他に本業でもあるか
主婦なのかしらね」 リツコは水桜由紀と言う作家の事について考えていた。

だが、心の底に意図的に沈めていた言葉が浮かび上がって来た……

「ユイ基金……」元ゲヒルン時代からの職員で碇ユイの名を知らぬ者はいない……
だが、その二つを重ねる事に理由など無かったが、リツコはなぜだか落ち着きを無くしていた。

数分後リツコが携帯端末でメールチェックした時……
冬月からのメールが一通まぎれ込んでいた。
そのサブジェクトには……碇ユイと記されていた。




御名前 Home Page
E-MAIL
作品名
ご感想
          内容確認画面を出さないで送信する


どうもありがとうございました!


第6話 終わり

第7話 に続く!


[第7話]へ

[もどる]