マヤ保健医の午後のひととき

第4話 【白衣の天使】

作:尾崎@マナリアン


「ねぇ・・マナちゃん・・お昼だけど、行かないの?」マユミは、マナに声をかけた。

「いい・・マユミちゃんだけで行ってきてくれる?」

霧島マナは、マユミの方を見ずに、机を凝視していた。

「寝不足なの?マナ」

だが返事は帰ってこなかった。

「そう・・じゃ行ってくるね」マユミはお弁当を持って教室を出ていった。

マナはごそごそと、弁当を取り出して食事を初めていた。

「今はまだ・・会う勇気・・ない」マナはぼそりと呟いた。

「そうだ、午後の授業は体育だし、着替えておこうっと」
マユミは更衣室で体操服に着替えて、保健室に向かった。

いつも、ギリギリまで保健室でねばる為の経験であった。


「伊吹せんせーい」マユミは保健室の前で、声をかけた。

だが、返事は帰って来なかった。

「あれ・・鍵開いてる」マユミは保健室の扉を開けた。

「いないのかなぁ」マユミは、保健室の中を覗き込んだ。

「あ、」机の上には、少し留守をすると言うマヤの伝言と、
携帯電話の番号が書かれていた。

「少しかぁ・・」マユミは椅子に座ってため息をついた。

「白衣を着ずにでかけたって事は、買い物か何かかな」

マヤの椅子には白衣がかけられていた。

「一度・・着てみたかったのよね」マユミは、白衣を手に取り、袖を通した。

「へっへー どうかなぁ」マユミは、体操服の上に白衣を着て、上機嫌になっていた。

「遅いなぁ伊吹先生・・お弁当食べよっかな」

マユミは弁当を半分程、食べ終えた頃


コンコン
その時、保健室の扉がノックされた。

「は、ハイぃ」マユミは驚きのあまり、裏声で返事してしまっていた。

「気分が悪くて・・」保健室に入って来たのは、同級生のケイタであった。

かなり気分が悪いのか、視線は足元をさまよっていた。

「あのぉ 先生に相談したい事があるんです・・」ケイタは丸椅子に腰掛けた。

(わ、私に気付いて無い?)マユミは少し驚きながらも、平静さを取り戻した。

「どうかしたの?」マユミは最初出した、裏声で呼びかけた。

「最近・・眠れないんです・・それに食欲も無くて・・」

「病院・・行ってみた?」

「昨日・・近くの病院に行ったんですけど・・病気じゃ無いって言われました」

「なにか、思い当たる事でもあるの?」

普段のケイタなら、マユミの裏声に気付いただろうが、
今のケイタには、それを聞き分ける事も出来なかった。

「ええ・・ある人の事を考えてしまうと・・眠れないんです・・」

「その、あなたの好きな人?(ケイタ君・・他に好きな人いたんだ・・)」

「ええ・・その人の事が頭に浮かぶと、勉強してても集中出来ないし・・
こんな事・・初めてなんです・・どうしたら、いいんでしょう・・」

だが、マユミはショックで、言葉を失っていた。

「ど、どうにもならないんですか?」ケイタは少し不安そうに言った。

「・・告白するしか無いんじゃ無いの?その人に・・」

「・・・・そ、そうなんですけど・・」


「どんな人なの?上級生?それとも下級生? 同学年なの?」

同学年と言った瞬間、ケイタは震えながら肯いた。


(だ、誰なんだろう・・・聞きたく・・無い・・私・・やっぱりケイタ君の事・・)

「いつも、同じ委員やってるんで、その時だけ・・声をかける事が出来るんです・・
けど・・僕はそれだけじゃ嫌なんです・・」

「名前は?」マユミは震える声で言った。

「山岸・・マユミさんです」ケイタは顔を真っ赤にしながら言った。

「あの・・この事は秘密にして・・」だが言いかけた時、マユミはケイタに近づいていた。

足元に、マユミの影が見え、不審に想った瞬間、ケイタは抱きしめられていた。

「あの?先生?」

だが、ケイタからは、顔が見えず、白衣につつまれた両胸が目の前に見えるだけであった。

「あの・・どうかしたんですか?」ケイタは訳がわからず、マユミから離れようともがいた。

その時 白衣を止めていたボタンが外れ、ケイタの眼前には、体操服とブルマが見えていた。

「た、体操服?ぶ、ぶるま?」ケイタは訳がわからずマユミに抱きしめられていた。

そして、胸の名札をケイタは発見した。

暗いのでわかりにくかったが、その胸には山岸マユミの名が見てとれた。

「や、山岸さん?」

ケイタの声で正気に戻ったマユミは身体を離した。

ようやく、目と目を合わしたマユミとケイタ・・

「ケイタ君・・嬉しい・・・私も・・ケイタ君の事・・好きよ」マユミは顔を真っ赤にして言った。

「マユミさん・・」

「何も・・言わないで・・」マユミは目を閉じた。

ごくっ

僅かにつばを飲んだケイタは、その意図に気づき顔を寄せた。

その瞬間

キーンコーンカーンコーン 

昼休みの終わりを告げるチャイムの音が無慈悲にも鳴り響いて来た。

はっとして、硬直するケイタ  

だが、マユミは自分から唇を重ねた。


数秒の間だったが、二人は唇を重ねる事で、お互いの気持ちを確認しあっていた。


「さ、走らないと、遅刻するわよ」マユミは白衣を脱ぎ、元どおりに椅子にかけて、走り始めた。

「ま、待ってよ山岸さん」ケイタもその後を追って走り始めた。


二人の去って行く姿を映し出している、保健室の鏡がしゃべる事があればこう言うだろう

「青春だねぇ」

第4話 終


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