「ところでどうして僕の頭をはたいたの?」
着替えたアスカにシンジが疑問を口にした。

「シンジが……寝言でいやらしい事言ったからよ」
あながち嘘では無いが少し無理のある抗弁であった。


「ところで、シンジは何しにここに来たの?」

「ああ、忘れてた お盆なんだけど家族で神戸に行くんだけど、
アスカも一緒に行かないかって 父さんと母さんが言ってくれたんだ。」

「家族旅行に? 私も?」 すでにアスカの頭の中ではシンジの両親に認められた=
家族旅行にご招待=もうすぐ本当の家族になる と言う感じで妄想が渦巻いていた。


裏庭歌劇団

作:尾崎貞夫

第5話【妨害】


蝉も眠りに付き、微かに虫の羽音が聞こえるような午後9時半……
アスカが劇場から寮に帰るまでシンジはずっと付き添っていた。


「それじゃ14日の朝8時に駅前で」

寮の門が見えた辺りでシンジはアスカに話しかけた。

寮の誰かに見られたら自分もアスカも不都合だからだ。


「うん シンジ……わざわざありがと」
「それじゃおやすみ」

二人は別れ、アスカは門を開けて寮に入り シンジは一度寮を振り向いてアスカが中に入る
のを確認してから寮の前から立ち去った。

寮の脇の駐車場沿いの森の中から綾波レイが注視しているとも知らずに……


「碇君……」レイはシンジの背中を見つめていたが、姿が見えなくなると
待たせていた黒塗りのベンツに乗り込んだ。


綾波レイも自宅……しかも豪邸から通っているのだが普段は黒塗りのベンツで

送り迎えなどして貰ってはいない……なのに今日に限って黒服の男が運転するベンツに

乗ってわざわざ寮まで来たのか……謎が残る所である。

素直にまだレイの設定考えて無かったと言え(藁


四日後 アスカは学校でダンスの授業を受けていた……

「ふぅ 疲れたわねぇ」 ヒカリはタオルで汗を拭きながらアスカに話しかけた

「あれ、タオル忘れたみたい……」 アスカは小さなバッグの中を探していた。

「アスカが忘れ物なんて珍しいわね……どうせ今朝も寝坊しそうになって慌ててたんでしょ」

「ご名答……タオルを洗濯機に放り込んだはいいけど、替わりのタオル詰めるの忘れたのよ」
アスカは鞄の中を探すのを諦め手の甲で額の汗を拭った。

「アスカ君 ここにいたのかね」
その時、演出家のタームが書類を手にして歩いて来た。

「あ ハイ」

「オーディションがあるんだが受けてみないかね……君もたまには違う役をやりたいと
漏らしてたそうじゃ無いか」 タームは手にしていた書類をアスカに渡した。

「ん?タオルは無いのかね? 風邪を引くぞ……」
タームはポケットの中からハンカチを取り出した。

「取り敢えずこれで拭いておきなさい それじゃ」

「あ……ありがとうございます」

「うわっ 紫色のハンカチなんて凄い趣味してるわね ターム先生」

「紫……けど そんなに悪い色でも無いんじゃ無い?」
アスカはタームから貰ったハンカチで汗まみれの額と胸元を拭いた。

 裏庭オークション
 今日の出品物は アスカが胸元を拭った紫色のハンカチです
 1万円からのスタートとなります お電話はこちら 岡山086〜

ダンスの授業の次は昼休みだったので、アスカとヒカリは着替えて屋上に来ていた。

「ふぅ ダンスの授業の次がお昼休みっていいわね 逆だと逆流しそうだもんね」
ヒカリは余程お腹が空いていたのか、弁当箱を取り出しながら微笑んだ。

寮母さんが用意してくれるお弁当は美味しいと評判で残す人は殆どいないぐらいだ。
ただ、福岡出身なので、時折芥子めんたいこが入っているのが玉に傷であった。


「ふぅ ごちそうさま……さてと」
アスカは弁当を食べおえて、タームから手渡された資料を紐解いた。

「ふむふむ……シアター名子縷々 来場90万人記念公演か
オーディションは……  8月14日ぁ?

「ちょっと何よアスカ 大声出さないでよ」
紙パック入りの紅茶を飲んでいたヒカリは咽せそうになっていた。

「14日は……シンジと……どうしよう」
アスカはヒカリの問いかけにも気づかず資料を胸に抱いて呆然としていた。


話は二日前に遡る

「お招きありがとうございます 碇さん」
タームはゲンドウに招待されて碇家に赴いていた。

「今度の作品では親子三人がお世話になる事だし、プロットの一部でも教えて貰ったら
役作りが楽になりますからなぁ」 ゲンドウは笑いながらタームに席を進めた。

「最近 断酒令を出したものだから、主人は飲む口実を探してばかりなんですよ」
ユイはとっておきの ヤマモモワインを冷蔵庫から取り出しながら言った。

「今日はシンジ君は確か加藤先生演出作品に出演でしたね」
タームはグラスに注がれたヤマモモワインを飲み干してから言った。

「ええ、裏庭歌劇団の皆さんが使ってくれるのでてんてこ舞ですわ」

「それじゃ休みなんか殆ど無いでしょうね……若さっていいですね」

「さすがに盆だけは休ませますよ 14日は家族全員とアスカ君を連れて、
神戸に家族旅行の予定なんですよ」

「お盆に休ませないと地獄の釜で煮られるって話もありますしね」
さりげなくプレッシャーをかけながらユイはタームのグラスにワインを注いだ。

本当です 丁稚奉公でも盆は休ませて貰えたらしいです

「ほう……アスカ君も一緒ですか」 タームの目がキラリと輝いた。

その後一時間程酒宴は続いたが、碇家を辞する頃にはタームの腹は決まっていた。

「今、恋愛にうつつを抜かされては困る(言い訳)」

で二日かけて14日にオーディションをやる劇場を探していたと言う訳であった。

この作品はフィクションです。 実在する人物・団体・サイト・作品とは何の関係もありません
*尚、フィクションですからタームさんに石を投げないように(笑)




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どうもありがとうございました!


第5話 終わり

第6話 に続く!


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