「美味しかったね シンジ」 アスカは食後にパンプキンケーキとカフェオレを注文し、
そのどちらも満足出来る味だった為、上機嫌で帰途についていた。
「あそこの唐揚げ どうしてあれだけジューシーなんだろう……真似出来るかな……」
そして、マンションの前まで帰り着くと、
そこには現場監督が立ったまま二人を待ち構えていた。
「監督……」
第9話 「復職」
「これ……」 この肌寒い時期にいつからここに立っていたのだろうか 現場監督は頬を
紅くして立っており、二人が口火を切るのに躊躇しているとスーパーの袋を差し出した。
「あ はい」 シンジは一言頷いて現場監督の手からスーパーの袋を受け取った。
「パイロットの陸前君だけど、おかげで一命を取り止めたよ……」
重苦しい雰囲気の中、現場監督が表情を少し緩めて言った。
「そうですか……よかった」
「本当に……よかった」
救出した後、何も言わずに現場を去った事で、食事中にその事が少し気になっていた二人
はようやく心の底から安堵する事が出来た。
「明日から数日はNERVの現場検証があるんだが、その後には破壊された施設の改修
など、ネルファを必用とする仕事が残っているんだ。 虫のいい事だとは分かってるんだが」
現場監督は暗にシンジの復職を求めていた。
「ネルファの開発に関った人間として……後始末をする必用もあります
改修が終わるまで、お手伝いさせて頂きます」
シンジが頭を下げてそう言うのを見てアスカは内心驚いていた。
ネルファにシンジが関ったのはテストパイロットとしてだけだと思っていたからだ。
「無論、給金は払うよ それじゃ、工事再開の日取りが決まれば連絡するよ ありがとう」
肩の荷を降ろした現場監督はそう言って寒さを感じないかのような足取りで去っていった。
「コロッケ……食べる?」 かぼちゃ入りコロッケの賞味期限が気になったシンジは
コタツに入っているアスカにビニール袋からパッケージを取り出して見せて言った。
「いい……」 何の違和感も無くシンジの部屋のこたつに入りながらアスカはシンジに
説明を求めるべくシンジの顔を見つめていた。
「……ビール 飲むか?」
シンジはアスカの視線から逃れるかのように立ち上がり冷蔵庫まで歩いていった。
「飲む……」 アスカはコタツの天板に顎を載せて眼だけをぎょろりと動かして言った。
サードインパクトとでも言うあの事件の後、地軸の傾きはセカンドインパクトの前にほぼ
戻り、日本は四季を取り戻していた。 完全に同じでは無いのだが……
アスカにとってこうしてコタツで
マターリ
のんびりとするのは初めての事であった。
「あと2本か また買っておかないと……」
シンジは冷蔵庫からエビチュを二本取り出して呟いた。
いろんな事があったので精神的にも肉体的にも疲れていたアスカはコタツの天板の上に
ビールを置かれた音で眠りの園から帰還した。
「ありがと……」 アスカは缶ビールの蓋を開け、一気に半分程を飲み干した。
「聞きたい事……あるんだろ?」
シンジは少しづつ冷たいビールを喉に流し込み、張り詰めていた緊張感を解き解いていった。
「うん……」 アスカはコタツから顔を引き剥がし、少し乱れた髪を手ですいた。
「ネルファの……テストパイロットしてただけだと思ってたけど……それだけじゃ無いのね」
アスカはビールをちびちび飲みながら話を始めた。
「ネルファには衛星軌道上を遊弋している筈の初号機のコアのコピーが使われているんだ
もっとも、完全な物では無くて、解析用に取ったコピーなので劣化が激しいらしいんだ。
だけど、そのおかげで自我と言うべき物は残って無いので、ネルファのコアには
丁度いいって事になったんだそうだ。 で、初号機のコアは母さんだから、
ある日 松代にいた僕をマヤさんが訪ねて来たんだよ」
シンジはこれまで秘していた事をぽつりぽつりと話しはじめた。
「シンジのお母さんのコアを使うから、許可を求めに来た訳?」
アスカは半分程に減ったビールを一気に飲み干して言った。
「それと……ネルファの開発に関らないか って事を言いに来たんだよ」
シンジは空になったアスカのビールを見て、もう一本飲むかどうか、
冷蔵庫をジェスチャーで示してから言った。
「頂くわ……」 すでに適量を越してはいたものの、素面で聞くのが恐い事もあり、
アスカは冷蔵庫からエビチュを出して着てプルを開けた。
「それで、ネルファの開発にも元パイロットとしての意見をアドバイザーとして、
伝えて、操縦系統なんかでもアイデアが採用されたりとかして……結果
ネルファの開発に大きく関与してしまったんだよ……冬月さんの陰謀でね……
そうとは知らない僕は 暴走しないエヴァ ネルファで町の復興の為に
結果的に実績を立ててしまったから……ネルフの副司令の一人として迎え入れられたんだ」
ゲンドウ:冬月体勢の時は司令一人副司令一人であったが、
極度な人員不足・新規人員・残留人員のスキル不足の為に、
司令は冬月一人だが、作戦方面副司令に日向 技術開発方面副司令にマヤ ネルフ運営関連
の副司令に青葉 が就任していた所に、第三新東京市復興プロジェクト担当副司令として
シンジが迎え入れられる事になったのであった。
「シンジが副司令……MAGIのアカウント貰ってるけど、知らなかった」
アスカは二本目のビールを半分程飲んだが、もう適量をかなり越して顔を真っ赤にしていた。
「つくづく、何もしてなかったように見えたミサトや、マッドなリツコの占めていた
比重が高かったって事よね……加持さんもか……」
アスカは淡い恋を抱いていた加持の死をシンジに知らされた時の事を思い出していた。
「意図してトップの平均年齢を若くしようとしてるらしい……冬月さんに聞いた話では、
これで30年は大丈夫……だそうだけど。」
「ねぇ……これ飲んでくれない?」
アスカは真っ赤な顔をして、少し口紅が付いた飲み口をハンカチで拭って
半分程残ったエビチュを差し出した。
「……いいよ」 シンジは少し苦笑して真っ赤になってるアスカを見ながら飲み干した。
「もう9時半ね……おいとまするわ ちょっと酔っちゃったし」
アスカはふらつく足取りでコタツから出て立ち上がった
「あした 朝ご飯お願いね」 アスカはちゃっかりと朝ご飯を強請りながらドアに向かおう
とした。
「うん……分かったよ」 シンジはアスカが出れるようにドアのロックを外した。
「きゃっ」 アスカは酔っているせいでコタツのコードに気づかず、足を取られてしまった。
「危ないっ」 このままだと柱の角に顔が当たると思ったシンジはアスカを受け止めた。
「あはは……助かった……いつも……シンジには……」アスカはそっと目蓋を閉じた。
シンジは、アスカが酔っているのか、誘っているのか、両方なのかを区別出来ずにいた。
「この前の……続きをしましょ」 アスカはシンジに抱きしめられたまま呟いた。
シンジの唇がアスカの唇に触れた時、
アスカは本当の意味で帰るべき場所に還って来たのだと思い、涙を流した。
・
どれぐらい経過したかは書きません 御想像におまかせって奴で
・
扉が開き、アスカはシンジの部屋から今度こそ退去した。
「明日の午前中は現場検証に立ち会うから、学校行けないから……」
「明日の一般教養は私じゃ無いから……」
アスカは暗に代返をしてもいいよ と言う意味を込めていた。
「それじゃ……おやすみ」
「おやすみ」
アスカはシンジの部屋を辞した。
「寒いし早く帰ろ」 アスカは廊下を足音がしないように歩いて自分の部屋の扉を開けた。
そして、翌日 の朝7時
「アスカ……起きてよ アスカ」
シンジがアスカの部屋の前で呼び鈴を時々押してはアスカを呼びつづけていた。
あまり呼び鈴を押すと、下にいるヒカリにばれてしまうので、控えていたが、
ご飯が冷めるので、シンジはついに四回目の呼び鈴をおした。
「はーい」 ようやく起きたアスカが寝崩れた寝間着のまま玄関を少し開けた。
「朝ご飯出来てるから」 シンジは小声で告げた。
「すぐ着替えて行くから…… ありがと シンジ」
「じゃ」 シンジはアスカの部屋の前から離れて自分の部屋に帰ろうとした時、
下の階のヒカリの部屋の扉が開かれた。
「朝ご飯食べていけばいいのに……鈴原の好きなきんぴらごぼうもあるし」
「悪いっ 賞味期限ヤバいパンがあるんや 喰っとかんと じゃ」
そう言って鈴原がヒカリの部屋から出てきた。
「おっ シンジやないか そんなとこで何……」 自分もヒカリの部屋から出てきた事を
棚に上げたのか忘れていたトウジはシンジに声をかけた。
「ん……ちょっとね」 シンジはごまかそうとしたが、それは無理な相談であった。
「そうか……じゃあな」 トウジは納得した と言う顔で自分の部屋に戻って行った。
「昨夜は下の部屋にいなかったのか……」 シンジは別の意味で少しほっとしていた。
少しして、アスカが朝食を食べに来ていた。
「やっぱシンジの作るご飯は美味しい」
昨日材料を調達していたので、昔シンジが作っていたような料理にアスカは涙を
流さんばかりに喜んでぱくついていた。
「そう……喜んで貰えて嬉しいよ…… そうそう 今度からはもっと早く起きてくれよ
下にいる洞木さんに気づかれないか……」
「ごめんごめん 今度からは直接起こしてよ」 アスカは少し頬を染めて言った。
「は?」 直接の意味が分からずシンジは首を傾げた。
「こういう事よ……」 アスカは懐から自分の部屋の合鍵を取り出して言った。
「う……うん わかったよ」 シンジはアスカに貰った鍵を懐に入れた。
少しして……
「もう7時半か……私 行って来るね それじゃ」
アスカはシンジのご飯を食べて元気一杯で部屋を飛び出して行った。
「合鍵か……」 シンジはアスカに貰った鍵をキーチェーンに繋げた。
その日の夕方……アスカが大学から帰って来ると、玄関にあるポストに封筒が入っていた。
「何かしら」アスカが封筒を開けると、メモ用紙と鍵が入っていた。
「これ……」 今朝自分が渡した鍵が返されたのかとアスカは顔を歪ませたが、
自分の部屋のものとは違う事に気づき、メモ用紙に視線を這わせた。
”今日は肉じゃがを多く作ってしまったので、食べに来ても可。
俺は遅くなるから一人で食べてていいから” と書かれていた。
「シンジ……」アスカはシンジの部屋の合鍵を握り締めた。
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経過時間書かなくてもバレバレなんすけど……
描写せんとはあんた鬼や
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
内容確認画面を出さないで送信する
どうもありがとうございました!
第9話 終わり
第10話
に続く!
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