「家に帰ろう…アスカ」
シンジはフェンスに身をもたせかけていたアスカを抱き寄せて言った

「うん……私たちの……家に」
アスカはシンジの家族に戻れた事に心から喜んでいた。

そして15分後……

ようやくネルフのネルファの緊急対策部隊が来た頃にはシンジとアスカの姿はもう無かった。

「あ……これ返すの忘れてた」
作業員は右手にスーパーの袋を握り締めているのを思い出した




第8話 「清算」


町は夕暮れに包まれ、あちらこちらで街灯に灯が灯りだした頃、
二人は言葉も無く、歩きつづけていた。

まだ先程の事件から30分と経っていないので、現場付近ではサーチライトが灯されて
いるのが見えたが、これ以上関る気は二人には無かった。

二人が何故こうして歩いているのか 事の起りは……

「あ…… シンジに渡されてたスーパーの袋……」
二人の住むマンションが見えて来た頃になってアスカはふと足を止めた。

「そういえば持って無いね……まぁそれどころじゃ無かったけど」
シンジは手ぶらのアスカを見て微笑した。

「シンジ……ごめん」
アスカは己のうかつさを呪った

「んーあれは明日の朝食の材料だけで無く、晩飯も入ってたんだけど……」
シンジは冷蔵庫に残っている食物の一覧表を頭の中で参照した。

「私に責任あるし……どこかに食べに行かない? 私がおごるからさ」
アスカは名案だとばかりに手を打ってシンジを見上げた。
今ここで別れたく無かったと言うのが心の底にあるのだが、アスカは気づいてはいなかった。

「そうだね……苦学生としてはそうして貰いたいね
 ちょっと歩くけど美味しい店があるんだ……」
シンジはそう言って再び歩きはじめた。

「シンジが美味しいって言うぐらいだから期待出来そうね……」
アスカはごく自然にシンジと足並みを揃えた。



まだ都市整備が続いているので、何度も角を周りながら二人はレストランに向かっていた。
恐らくレストランで放り出されたらアスカは歩いては帰れないであろう。

「この辺りは大きな建物が無いから星が何とか見えるわね」
アスカは一番星がいるであろう軌道を目で追った。

「ドイツではどうだったの?」
シンジは少し逡巡してアスカに問いかけた。
あんな事があった直後にドイツに戻ったアスカに必ずしもドイツにいい思い出が
あるとは限らないと思っての逡巡であった。

「最初の三年は……星なんて見る余裕無かった……失われたプライドを取り戻すので
精一杯だったの……だけど、それは自分を満足させるだけの行為だって気づいたの。
そしたら無性にシンジ……あなたの事が思い出してしまっていたの。
あの頃の私は素直じゃ無かったから…… 今だから言うけど……
シンジとしたキスが……ファーストキスだったのよ」

アスカはシンジを直視する事が出来ず、俯きながら言った。

「あの頃……僕は君に嫌われてると思ってたから……意外だった」
シンジは少ししてから小声で語りはじめた。

「私も……好きなのか嫌いなのか……自分でも分からなかったわ」
どうやらシンジの目指すレストランらしき建物が見えたので、
アスカはそこで話を打ち切った。

レストラン”α”は天井がかなり高く開放感があり、アスカは一目で気に入っていた。
ファミリーレストラン風ではあるがチェーン店では無いようであった
「何が美味しいの?」
土佐道路のαは美味しい 毎週木曜に喰ってます(笑)

「インディアンピラフとかオムライスかな それ以外ではラーメンセットぐらいしか
食べた事無い……給料日ぐらいしか来ないからね」
シンジは事実上の禁煙席となっているらしいレストランの奥に足を踏み入れた。

「私のおごりなんだから、これまで挑戦した事無い高そうなの試してみたら?」
「まぁここなら和洋中どれでもハズレは無いみたいだけど……ケーキでも有名らしいよ」

「私はポプラ膳ってのにしてみようかな 和食の味つけ覚えたいし」
アスカは1280円のセットを指差した。

「それも食べた事無いよ……僕もそれにするよ」
シンジは少し遠慮がちに答えた。

「ふふ……」 
「どうかした?」 アスカが理由も無く笑ったのでシンジは戸惑った。

「いや、いつの間にか、俺から僕に呼び方が変わってるから……」
アスカは先程笑った理由を説明した。

「僕って言ってた?」 シンジは少し恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
それはアスカにとってはとても懐かしい笑顔でもあった。

「リラックス出来てるからかな……これまでは自分の部屋にいても、いつも張り詰めた
ような感じだったから…… アスカとこうして会えた事で安心したのかも知れない。」
シンジはコップの水で舌を湿らせてから言った

「シンジ……」 それは私も一緒だ……と言いかけた時、
ウエイターが注文の品を持って来た。

「美味しかったね シンジ」 アスカは食後にパンプキンケーキとカフェオレを注文し、
そのどちらも満足出来る味だった為、上機嫌で帰途についていた。

「あそこの唐揚げ どうしてあれだけジューシーなんだろう……真似出来るかな……」

そして、マンションの前まで帰り着くと、
そこには現場監督が立ったまま二人を待ち構えていた。

「監督……」




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どうもありがとうございました!


第8話 終わり

第9話 に続く!


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