「いっ? もしかして、アスカか? おまえ同い年やろが 何で先生やっとんねん」
トウジの台詞に教室内はざわめきが巻き起こった。
確かに見た目が若い先生ではあるが、本当に若かったとは気づかなかったのだろう。
「シンジはパンキョー(一般教養)なんかかったるくて出てられん バイト優先やゆうてな」
「いいことっ 私は代返なんか認めませんからねっ」
ざわめきが拡大しはじめていたのをアスカはぴしりとおさめた。
「まさかシンジが大学生だったとは……あの馬鹿(鈴原)まで……」
アスカは冬月の苦笑する姿が浮かんで見えた。
第3話 「真実の重み」
「あ、惣流君 お疲れ」
助教授の吉川が一般教養の講師を終えて帰って来たアスカを出迎えた。
「お疲れ様です」
今日初めて顔を合わせた割には吉川という助教授はアスカに対して屈託が無かった。
生物工学部の教授としては学長である冬月が兼任している為、
この吉川が事実上、生物工学部をしきっていると言ってもいいだろう。
「いや〜生物工学部に君を招きいれる事が出来て良かったよ
理学部・工学部・物理学部など、引く手あまただったからねぇ」
吉川が機嫌が良く、アスカに屈託の無い一因がこれであった。
エヴァやネルフに関りのある各方面に造詣が深いので、アスカは引っ張りだこ
と化していたのだ。
そのアスカを引き入れる事が出来たという事は、来期の予算獲得への多きな利益である
事が最大の原因ではあったが、アスカにそこまでの考えは無かった。
「吉川助教授 他に助手の方もいるのに私が講師になってしまって、
心苦しいぐらいなんですから……あ、お茶でも入れましょうか」
時間が早い為、学生がいなかった為、アスカは給湯室に歩いて行った。
「何か調子狂うのよね あれでも元ネルフの技術者かしら……」
だが、心から歓迎されているのは事実なので悪い気はしないアスカであった。
手早くお茶を用意し、控え室にアスカは持って行った。
「やぁ すまないねぇ 女性差別ってんじゃ無いんだけど、
男がいれたお茶よりやっぱ見目麗しい女性がいれたお茶の方が美味しいんだよ」
吉川は上機嫌で鼻歌でも歌いだしそうな程であった。
「あっ、そうそう 学長にいわれてたんだった MAGIのアクセス権の付与の事は知ってる
よね?」
「ええ、A級レベルの機密までアクセス可能なIDを頂いています……
もっとも殆ど知ってる事ばかりですけどね」
アスカは自慢にならないように注意して答えた。
「エヴァのパイロットだったんだから、機密の塊みたいなもんだね……
で、君用の端末だが、MAGIに接続可能なクラスが今無いんでね、
学長から予算を頂いたから、自分で気に入った端末を購入して来て欲しいんだ。
セキュリティレベル等によって、指定があるみたいだから電算室に聞いてくれたまえ」
そういって吉川は大学の器材購入用の手続き書と、予算50万保証のカードを差し出した。
「わかりました 今日にでも電算部に寄ってから見に行って来ます」
アスカはあずかった手続き書とカードをブリーフケースに修めて指紋によるロックを施した
「今日はもう予定無いだろう 夜、生物工学部での歓迎会があるから、
それまでに調達して来たらいいよ いろいろ揃える物もあるだろうしね。
あ、君の部屋は手配してあるから、明日には使えるようになるよ」
「ありがとうございます 本来部屋付きなのは助教授以上なのに個室を貰うのは
心苦しいんですが、セキュリティの問題もありますから、つかわせて貰います」
早速端末を調達する為に、アスカは電算部から資料を貰い、
指定されているショップに出向いた。
前世紀の終わり頃から、手書きでの卒業論文など認められなくなっていたので、
大学のすぐ近くに大学の学生を見込んだ大型店があるのだ。
20分後、アスカは購入する端末を決定し、手続きを済ませてから昼食を取る事にした。
「この辺りで美味しい店を助教授に聞いておけば良かったかな……」
時間は12時10分という所で、学生街には学生の姿があちこちに見られた。
「ここでいいか……」 アスカは近くの喫茶店に飛び込み、昼定食を注文した。
雑誌は趣味にあうものを置いて無く、アスカは窓の外を見ながら物思いにふけった。
「あのシンジがねぇ……男らしくなっちゃって…………」
最初は懐かしさと一縷の辛い思い出が入り交じった感情が支配していたが、
シンジが授業をさぼり、バイト三昧だという事が気に食わなくなって来ていた。
「この私の授業をエスケープするなんて……って知らなかったのよね……
私もシンジに教える立場だって知らなかったんだし、仕方ないか……」
注文していた昼定食を食べおえ、デミコーヒーを飲みながらアスカはシンジが何故
バイトをしているかという疑問にぶちあたった。
「あいつもパイロット時代の固定給と恩給と危険手当で20代は働かずに済むだけの
お金を支給されてるのよね……それに碇指令の遺産もかなりのものだと思うし……」
考えれば考える程、シンジの行動の事が気になってしまっていた。
空になってしまったコーヒーカップを皿に戻して、アスカは決意した。
「どうせ、昨日と同じ現場よね……直接行って問いただしてやる!
そうよ これは講師としての義務なのよ!」 アスカは自分に理由を付けて立ち上がった。
GPS付きの携帯電子マップを先程の店で自腹で購入していたアスカは
電子マップを見ながら、昨日行った現場(自分の家の前だろうが)に向かった。
「何がマップを毎週更新よ……全然通れないじゃ無いのよ!」
時間はもう1時を回ったが、アスカはまだシンジの現場に辿りつけて無かった。
結局、遠まわりだが確実な道を通り、アスカは1時半頃に昨日の工事現場に辿りついた。
もう昼休みを過ぎてるので、大勢の作業員が現場で働いていた。
「あの〜NERV第一大学の者ですが、碇シンジ君にお話しがあるんですが、宜しいでしょうか」
アスカは陣頭指揮をしている現場監督らしき男に話しかけた。
「は? 碇君ですかい? ちょっと本人に聞いてみますわ まぁどうぞ」
現場監督はアスカにプレハブの事務所内の椅子に座らせた。
「おい、碇君 何か分からんけど大学の職員さんが来てるで」
現場監督はネルファとの通信機のスイッチをいれて話しかけた。
「職員……まぁ確かに職員よね……」
アスカは内心でそう呟いた。
この歳で大学で教鞭を取っていると普通は思わないだろう。
「職員? 誰です」 作業中なのか、帰って来たシンジの答えは少し荒かった。
「名前は聞くのは忘れとったけど、金髪の若い職員さんだ」
「今は仕事中ですから、休憩時間まで待って貰って下さい」
シンジの答えはそっけない物であった。
「そうか……わかった」 現場監督はスイッチを切ってアスカの方に向いた。
「そういう訳ですから、もし良かったら少し待って貰えますかね?」
アスカが黙って頷くと、現場監督は事務所の奥にいた職員に声をかけた
数分後 お茶を出されたアスカは現場監督から質問攻めにあっていた。
「ほう、そうですか、NERV第一大学で講師を……お若いのに凄いですな
NERV関連は実力主義だってんで、人気があるそうですなぁ」
「ところで、碇君にどんな用があるんですかい? まさか、学費を払って無いとか……」
本心からシンジを心配しているのか、現場監督はシンジに成り代わり問いかけて来た。
「いや、そういう訳では無いのですが……私の授業を今日ボイコットし代返を立てたんです。
無論小・中学校じゃあるまいし、そんな事で追いかけたりはしないんですが……
私、碇君とは中学の一時期、同級生だったんです。 それでどうしてここまでバイトを
しているのか……正直計りかねてるんです」
「はぁ そうですかぁ 見た目お若いと思ってたんですが、碇君と同級じゃ18・9
と言った所ですか……実は私も彼の詳しい事情を知ってる訳では無いんですよ……
ここの工事が始まってすぐ、一人だけいたネルファのパイロットが急病で倒れましてね、
ネルファのポイロット募集と言う貼り紙をそこの前に張ってたんですよ。
そしたら、ある日碇君がバイトでも構わないのかと言って来ましてね。
ご存じだとは思いますが、ネルファの操縦資格は結構難関なんで、有資格者じゃ無いとって
言ったら、何と第一種・第二種両方のネルファの免許証を提示されましてね。
機械を操作するだけの単純な機械じゃ無く、シンクロとか言う特殊な方法を使うそうで、
ネルファの有効性はわかっていても、パイロット不足なこの業界ですから、
我々も納期を遅らせる訳にいかないから、彼を雇ったんですわ……」
正直驚きましたわ 失礼ですが大学に入ったばかりの学生に勤まるものだとは思わなかった
んですが、まるで自分の手足を動かすようにネルファを操るじゃ無いですか。
「そうだったんですか……実は私、ドイツから帰国したばかりで、その辺りの事が……」
「まぁ実際は8時間働いて欲しいんですが、2〜4時間しか時間取れないかと思ったら、
納期押してる関係もあり、ここ数日長時間働いてくれてたんですよ……
学校は大丈夫って言ってたけど、授業出てなかったんですな……これは私の管理不行き届き
です。 誠に申し訳ありませんでした」
現場監督はアスカに頭を下げた。
アスカが現場監督に顔を上げさせている時、ようやくシンジが事務所に現れた。
「何でアスカがここにいるんだよ! 大学の職員って聞いたから出てきたのに」
誰からもアスカがNERV第一大学の講師になった事を聞いて無かったようで、
シンジは騙されたと感じているようだった。
「私、今日からNERV第一大学の講師になったのよ その輝かしい初授業を
パンキョーなんかかったるいとか言って鈴原に代返なんかさせるから来たのよっ」
アスカは胸を張って答えた。
「え? アスカが講師?」 シンジは状況が未だによく掴めてはいなかった。
「本来、代返がばれたら、最悪退学、そこまでいかなくても単位くれないのよ?
今日の所は私の一存で出席にしといたから、感謝しなさいよねっ」
アスカはシンジと言い合いながらも、同居していた頃のやりとりの数々を思い出していた。
「うっ……」 シンジは退学と単位と言う言葉に反応して押し黙った。
「大体なんでバイトなんかしてるのよ! ネルフ時代の恩給やパイロットの危険手当てで、
仕事なんか当分しなくても大学生活送れるじゃ無いのよっ しかも死んだとは言え、
あんたの父親はネルフの創立者でしょうにっ」
アスカは興奮していて、シンジがこれまで隠していた粗全てを喋ってしまっていた。
「そういうアスカだって、同じエヴァのパイロットだったんじゃ無いかっ
バイトじゃ無いとは言え、大学の講師なんかやらなくたって……未成年のくせに」
それに切れたシンジもつい言い返していた。
「未成年なのはあんたも同じでしょうが」
丁度休憩時間と言う事もあり、いつしかプレハブの事務所の外には作業員が
物珍しそうに、普段あまり喋らないシンジがアスカと話しているのを珍しそうに見ていた」
「ちょっと待ってくれよ……今エヴァのパイロット……とか言わなかったか?」
現場監督が二人のかけあいをぼーっと見ていたが正気に帰ってぼそりと言った。
アスカは喋るべきでは無い事を口走ってしまい、
シンジは勿論自分の立場をも危うくしてしまった事に気づいた。
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機密情報がだだ漏れだな
段々アスカらしくなってきた(笑)
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
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どうもありがとうございました!
第3話 終わり
第4話
に続く!
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