量産型エヴァの襲来とそれに伴う第三新東京市の崩壊から一年後……

混乱の世界でシンジはようやくパイロットとしての任を解かれる

そして中学校も無事卒業し、松代の高校に推薦入学の運びとなった。

無論エヴァのパイロットだと言う事は秘密であった。

だが、シンジがパイロットだと言う事を知っている生徒が3人いたため、

一月後にはシンジはほぼ全ての生徒と教師から総スカンを食らい、

先走った生徒には毎日呼び出されて殴られていた。


だが、ある生徒の一言がシンジを変えた。

自分のやって来た事のみならず綾波レイの死をも否定するその言葉で彼は
これまで蓄積してきた怒りをぶちまけたのだ。

そして三年の月日が流れた




第1話 「再会」


まだコンクリートの臭いが抜けきらない応接室で一人の女性が窓を見て物思いに耽っていた
窓からは中庭に学長の趣味で植えられた赤松が太陽の光を拡散させていた。
「これが風流って奴だったかしら……」
一年前にどこかから移植された赤松の捩れた枝を見て、
惣流アスカは日本に帰って来たのだな と帰国して二週間も経つ今になって感じていた。

「やぁ、すまんね 遅くなってしまって」
アスカを応接室で待たせていた張本人である冬月がようやく現れた。

「お久しぶりです 冬月副指令 いえ、今は指令でしたわね」
ドイツの大学院で過ごした三年が再びアスカに自信を取り戻させたのだろう
前回の来日の時に比べれば加齢を考えても比肩に及ばなかった。

「ゲンドウが全て押しつけていったからな……私としては早く指令職を譲って、
ここの学長だけに専念したいものだよ」 4年前も白髪であったがあの頃の髪量は無く、
少し寂しくなった冬月の頭を見て、苦労したんだな とアスカは感じた。

「日本に帰国……と言っていいのかな する事に御両親は反対されなかったかね?
 なにせ、あんな事があった訳だし……」


「元々血の繋がって無い親子ですからいいんです……
 来年には成人するので籍も抜くつもりでいるんですよ 向こうもその意向です」
死んだ実母の再婚相手である義父と義父が実母の死んだ後迎えた後妻との間で
生活を続ける事にはやはり無理があるのだろうと 冬月は納得した。

「葛城君や赤木君も失ってしまったので人材不足に嘆いていたから、オファーに君が
応じてくれて嬉しいよ

「ご期待に沿えるよう 頑張ります」 四年の月日を得て成長したアスカは堂々と答えた。

「懐かしい面々にきっと再会すると思うよ……おっと口止めされてたっけ……」
事務的な手続きで20分ぐらいかかり、応接室を辞する段になって、冬月が口を滑らせた。

「サプライズパーティでも開いてくれる予定だったのかしら? 知らないふりをしますわ」
そう言ってアスカは応接室を辞した。


「ドイツの大学に比べると生徒の真剣味が足りないわね……」
応接室を辞して何とか来た道を戻っている最中も、見慣れぬアスカを見てざわざわしている
生徒達を見てアスカは眉を顰めた。


「小遣い稼ぎのバイトやコンパの事しか頭に無いのかしらね……日本の未来は暗いわね」
嘆息と共に校舎から出て、冬月入魂の並木道をアスカは歩きながら呟いた。

来月……とは言っても10日も残されていないが、この大学に講師として在籍する事に
今さらながらアスカは僅かな焦りのようなものを感じたが、首を振ってそれを否定した。


ドイツの大学院に入学し、ドクターコースを修め博士論文として六ヶ所の技術雑誌に投稿
した論文は全て掲載され、極東の魔女とまで影で囁かれていた程の経歴ではあるが、
アスカにとっては日本を離れての大学院入学は仕切り直しの意味合いが強く、
簡単には壊れない確固たる自分と自信を取り戻す為であったのだ。

そして、”あの”アスカがあのような形で日本を離れてそれで大人しくしている訳が
無かったのである。 再び来日してネルフ関連の職に付きある意味リベンジする必要が
あったのである。 また、そう思いこむ事でもう一つの理由を覆い隠していた……


「えーと……おかしいわね……地図ではここを通って行けると思ったのに……」
アスカはネルフに用意して貰ったマンションへの地図を見ながら呟いた。

未だ再開発が続く第三新東京市は三日前の地図がもう役たたずになると言われている
程、全域で復旧工事が行われていた。

「あっ あれかしら」
工事現場の向こうに瀟洒なマンションを発見したアスカは次の瞬間落胆した。

「見えてるのに道が無いなんてふざけてるわっ まったく……」
マンションは見えているのに地図では道路だった場所は通行止めで地元民なら知っている
ような小径を知らないのでアスカは進退窮まっていた。

そして……
アスカは左右を確認してから、それほど高く無い工事現場のフェンスによじのぼった。

「よっと」 アスカは華麗な着地をおさめて、反対側のマンション側のフェンスまで
歩いて行こうとした。

「恐っ」マンションの側のフェンスに行くには 深く掘り下げられた地面に渡した
木製の橋を渡らないといけないのであった。

「そうと知ってたら地域住民を捕まえて道を聞くんだったわ」
アスカはぶつぶつ言いながら向こう側まで差し渡した木製の板で出来た橋を渡った。

いや、渡ろうとした。

連日の使用で傷んでいたのか、アスカが三歩目を踏み出した途端板が割れてしまったのだ。

時間がゆっくり流れているようにアスカは感じた。
そして、このまま放心していると大けがすると気づいたアスカは気合いを入れた。

「こなくそっ」
アスカは空中で一回転し、何とか掘の底に足から着地する事が出来た。

「あいたたた……足捻っちゃった」 さしたる怪我も無く3メートル程の掘の底に
着地する事が出来たが、着地の瞬間に足を捻ってしまっていた。

「ちょっとよじ登れないわね……こういう時の為にハシゴでも置いときなさいよ……」
アスカは一人穴の中でぶつぶつ言っていた。

「はぁ……もう6時だし工事は終わってるのよねぇ……明日の朝までここにいないと
いけないのかしら……」 アスカは嘆息と共に地べたに座り込んだ。

10分程しただろうか、アスカがうとうとし始めた頃、
どこからともなく地響きが断続的に聞こえて来た。

「何の音かしら…… まさかこのまま埋められるんじゃ無いでしょうね」
最悪の想像をしたアスカは少し肝を冷やしてしまっていた。

地響きは段々大きくなり、アスカのすぐ近くまで来て止まった。


「ん? 橋が壊れたのか」 
外部スピーカーから若い男の声が聞こえたので、
アスカは慌てて立ち上がった。

「落ちちゃッたの 助けてぇ!」
アスカは希望の主が見えるように反対側に歩いていき、助けを求めた。

地響きの主は全長15メートル程の大きさの角張ったイメージの小サイズのエヴァ
のような機械であった。

「これがネルファか……初めて見たわ」
マヤが第三新東京市復旧用に、安全なエヴァの工事用ロボットを作ったと言うニュースは
聞き及んでいたが、アスカが眼にするのは初めてであった。

コアの解析が完全に出来た事により、ダミープラグとは逆の発想でコアをデジタル化し、
暴走の危険も無くコアの製造の為に人命を損なう事の無いクリーンなマシンとして
エヴァはネルファとして蘇ったのだ。

「ん? 落ちたのか……ここは立ち入り禁止の筈なんだけど」
ネルファの外部スピーカーから先程の若い男性の声が響いた。

ネルファを操縦している若い男は苦労して膝を地面に付けて片手で機体を支え、
もう片手を掘の中に差し入れた。

人間の手を模した作りにはほど遠いが、人間を載せられない程鋭角的な作りでは無かった為、
アスカは何とかネルファの掌によじのぼってつかまった。

「いいかな? 上げるよ」
若い男は差し入れた腕を引き上げていった。
それと共に、掘の中にいた女性の顔をようやく認識する事が出来た。

「ふぅ 助かったわ ありがとう」 掌から降りたアスカは胸部のコクピット
を見上げたが光の関係で透明な筈のコクピットの中が見えなかったので中にいる筈の
ネルファのパイロットに御礼を言った。


「…………」

だが、返事は帰って来ず、返事の代わりにコクピットが下に排出された。


「な、何よ」 急な事だったので、アスカは驚愕した。

下に排出された操縦席の座席に座っていた若い男性がヘルメットを取った。

その瞬間、アスカの脳裏に様々な思いが駆け巡った。

「シンジ……本当にシンジなの?」
アスカは呆然としながらシンジを見つめていた。

「やっぱりアスカなのか……」 四年の歳月ですっかり青年らしくなったが、少し陰鬱な
表情をたたえたシンジが四年ぶりに再会するアスカを座席に座ったまま見つめていた。





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どうもありがとうございました!


第1話 終わり

第2話 に続く!


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