異説・12月3日の水曜日




注意! この小説は精神を汚染する可能性があります。ATフィールド全開でお読み下さい。


尚、前作”12月3日の水曜日” を読了してからで無いと理解出来ないかと思います。





作:尾崎貞夫



中編

ん……眩しい…… 私は眩しさのあまり目を覚ました。
ソファーベッドで、あの後シンジとそのまま眠りについたのを思い出した。
「今何時かな……」
私はシンジを起こさないように身体を起こして、柱時計を覗きこんだ。

「シンジっ 遅刻よチ・コ・ク!今日は朝イチの講義受けるんでしょ」
私はシンジの肩を掴んで揺すぶった。



私たちは慌てて服を着て、駅に向かってひたすら走った。

「ふぅ……この快速を逃してたら、遅刻だったわね……」
シンジは息を切らせていて、返事もまだ出来ないようだ。

「情けないわね……おとこのくせに」
「昨日、体力を使いきっちゃったからね……」
「駅に付いたらまた走らないといけないから、それまで休んでてね」
私はシンジに肩を貸してあげた。
「ありがと……」 シンジは私の肩に頭をもたせかけて、目を閉じた。


おとこのくせに……か 前に言った事あるような気がする……
そう……シンジと初めて会った時……あの時、シンジが女々しい事言うから、
はり飛ばしちゃったんだっけ……濡れた土の上に横たわってたシンジの白い首筋の……

「次の到着駅は第二東京大学前〜 第二東京大学前〜」
考え事をしていると、アナウンスの音が鳴り響いたので、私は降りる準備を始めた。

「ほら、シンジ 起きなさい!」

駅から走って5分……どうにか私たちは定刻までに教室に入る事が出来た。

「ふぅ……間に合ったね……」
「さすがに疲れたわね……後ろの方に座りましょ」

私たちは最後列の椅子に座り込んで講義が始まるのを待った。

シンジの腕時計のアラームが鳴ると同時に講師が入って来た。

「いつものセンセじゃ無いみたいだね」
シンジは眠そうにまぶたを半分閉じかけたまま言った。

「そうね……」 私は入って来た講師が女性だと言う事に気づいて注目した。
染めているのかうすら青いシャギーカットの髪に白い肌……薄いブラウンの眼鏡をかけ
て白衣を纏った姿を見て、私は昨日の事を思い出した。

「シンジ あれ おとなりさんじゃ無い?」 私はシンジの腕をつついて呼びかけた。
「あ……ほんとだ」 シンジもようやく気づいたのか、同意した。

簡単な自己紹介が始まり、私は耳を傾けた。

「初めまして 今日から臨時の講師を勤めさせて頂く、綾波レイと申します。
第三新東京市の私大を卒業後、大学院に入ろうと思ったのですが、
恩師が去年死にまして迷っていた所、臨時の講師のお話を聞いてやってまいりました」

挨拶の後は早速講義が始まり、私たちはあれこれ考える暇も無かった。


今日は受ける講義は午前中だけだったので、私たちは学食で食事をしてから帰る事にした。
私はカレーうどんとライス(小) シンジはうどんセットである。

「あんなに若いのに講師だなんて、珍しいね」
「そうねぇ……就職浪人したんじゃ無いの?」

「こちらいいかしら」
何気なく、隣人の話をしていると、後ろから声をかけられた。
そうめんセットを手にした、講師の綾波レイが微笑んでいた。

「あ、どうぞ」 驚いて声の出なかった私の代わりにシンジが声をかけた。

「確か……碇さんでしたよね 昨日はどうも」
「あ、いえ たいしたおもてなしも出来ませんで」
「そちらは惣流さんでしたっけ……入試の試験で首位だったとか」
「そうなんですよ……アスカに教えて貰えなきゃここに入れなかったんです」

少し話した後、僕達は再び食事を再開した。

そして、ほぼ食べおえた頃……爆弾は炸裂した。

「で、同棲してるの? アスカさんとは」 

私は飲んでいた水を吹き出しそうになってしまい、慌ててハンカチで口元を押さえた。

「その様子じゃ図星のようね……」

食堂にいた周りの生徒達の間に動揺が波のように伝わって行くのが見えるかのようだった。

学内では、手を繋いで歩くのさえ控えているし、講義を受ける時や食事の時に、隣の席に
座るだけにしてたので、綾波と名乗るこの講師に、バラされてしまったのだ。

「シンジ……」 シンジは否定せずに、ただ笑みを浮かべているだけだった。

「じゃ、帰ろうか……それじゃ失礼します」
シンジは私が食べおえてるのを確認して、立ち上がった。

「し、失礼します」 私もトレイを手に立ち上がった。

「それじゃ、またね」 綾波と名乗る女は意味深な笑みを浮かべて答えた。
あっちゃぁ……これまで隣人がいなかったから気づかなかったけど、壁……薄いのかしら。

土曜の昼下がり……
私とシンジは学校を出て、学校近くの喫茶店で2時間程おしゃべりをした。
シンジが3時から助教授に呼ばれているからだ。
明日の発表会か何かに、助教授のお供をするって言ってたからその打ち合わせだろう。

「それじゃ、行って来るよ 5時半ぐらいには帰るつもりだから」
シンジは伝票を手に立ち上がった。
「じゃ、晩御飯作って待ってるわね」 私はそう言ってシンジに手を振った。

晩御飯の買い物をするには、あまりにも時間が早いので、私は軽い飲み物を頼んで、
料理の本を読みながら、喫茶店で1時間程過ごした。

「今日はスパゲッティーにしようっと」 私は料理の本を棚に戻して、
飲み物代を支払って、駅に向かった。



「何にしようかな……シンジは何でも美味しいって言ってくれるけど……」
私はスーパーの生鮮食品売り場で、一人 夕飯の買い物をしていた。

「昨日 ビーフカレーだったから、肉続きはちょっとね……スパゲッティミートソースは
止めて、カルボナーラにしようかしら」 私は買い物かごに必要な材料を放り込んだ。

「明日はシンジがいないんだし……今晩は甘えちゃおうかなっ」
私はスキップしながら、レジに向かっていた。

「あら、惣流さんじゃ無い?」
私は誰かに呼ばれて振り向いた。
「ゲッ」喉からでかかった声を飲み込んで言葉を紡いだ。「あ、昼間はどうも」

「夕ご飯の準備?」
「ええ、そうなんです」

「あ、そうだ……惣流さんにお願いがあるんだけど……」
一緒にレジに向かってる時に、綾波と名乗る女が口を開いた。
「私に出来る事なら……何でしょう」
弱みを握られているので、下手な断り方が出来ない……
そうと知ってお願いするなんて、この女(ひと)……

「明日、どうしても外せない学会があるんだけど、弟は退院したばかりだから、食事の事で
困ってるのよ 朝ご飯は食べさせてから行くから、昼御飯と夕飯だけを隣に届けてくれない
かしら……ベッドの脇にあるテーブルにさえ置くだけでいいから……勿論材料費も出すし、お礼もさせて貰うわ……他に頼める人がいなくて……」 綾波と名乗った女は少ししおらし
く頭を下げたので、私は快諾した。 「ええ わかりました 昼と夜ですね」

なんだか気のくわない相手でも病人がいたり困ってる時はお互い様だしね……
暗に学校で、私たちの関係を話されたく無いからと言うのもあるけどね……

「ちょっと寄る所があるから、それじゃ」
綾波と名乗った女……綾波レイは反対側の方向に歩いていった。

私はその少し寂しそうな後ろ姿を見るとも無く見詰めていた。

「やだ、何してるんだろ……早く帰って料理作らないと」
私はスーパーの袋を手に家路についた。



Freu-de,scho-ner Got-ter-fun-ken,Toch-ter aus E-ly-si-um,

Dei-ne Zau-ber bin-den wie-der,was die Mo-de streng ge-teilt;

Dei-ne Zau-ber bin-den wie-der,was die Mo-de streng ge-teilt;

al-le Men-schen wer-den Bru-der,wo dein sanf-ter Flu-gel weilt;



私は第九の最終楽章俗称”歓喜の歌”の部分を原語で口ずさみながら料理をしていた。
「今日も……美味しいって言ってくれるかな……そしたら……ご褒美に……」
フンフンフンフンフンフンフンフン あっと気を抜いたら只の鼻歌になっちゃう。
「下準備は良しと……後はシンジが帰ってからね」 私は台所の上を手早に片づけた。

私はちらっと冷蔵庫の上にある時計を見た 5時25分……もうすぐシンジが帰って来る
帰る家があるのは幸せに繋がる事だと誰かが言ったけど……
誰かの帰りをを迎える事が出来るってのもいいものよね……特に愛する人を迎えるのなら

私……いつからこんなにシンジが好きになったんだろう……
私は手を洗いながら、シンジを好きになった日の事を思い出そうとしていた。

ピンポーン

無粋なチャイムの音だけど、明らかにシンジが鳴らしてる時は音が優しいような気がする。

「はーい おかえりっ」
私はエプロンの裏地で手を軽く拭いて玄関までシンジを迎えにいった。

そして翌日の日曜日……

シンジを送り出した後、部屋の掃除を済ませたので、私はソファーに腰を降ろした。
「さ・て・と お隣にお昼御飯持っていかないといけないのよねぇ……」
「今日のお昼は一昨日のカレーライスにしようと思ったけど……隣もそれでいいよね……
三日目のカレーライスが一番美味しいんだから……」 私は深呼吸をしてから立ち上がり、
御飯が炊けている事を確認して、鍋の中のカレーを覗きこんだ。
「うんっ二人分あるわね」 私は鍋に火をかけて、料理雑誌を左手に持って右手に持った
木製のしゃもじで鍋の中身をかき回した。 「今晩は何にしようかなぁ……」

数分煮ていると、いい香りが漂って来はじめたので、私は冷蔵庫から牛乳を取り出した。
パックの口を開いて、おちょこ二杯分程カレーの中に入れて、入念にかき混ぜた。
さすがに三日目だと水分も飛ぶし、味が心なしかキツくなるので、私はいつも牛乳を混ぜ
ているのだ。 昔、叔父様の書斎にあった漫画にも”ミルクカレー”ってあったし……
そんなに入れる訳じゃ無いけど、明らかに味が違うのよねぇ〜 よしっもういいかなっ

私は火を止めて、カレー皿に御飯をよそった。
「うん 美味しそう これなら文句無いわよね」
私はカレーを盛りつけた皿をトレーに載せながら呟いた。

「さてと、カード鍵っと」 今日だけこの部屋の鍵で開くように設定したと言う言葉を思
い出して、私はカード鍵をトレイの上に載せて部屋を出た。


ピンポーン 私は一度呼び鈴を押してからカード鍵で扉を開いた。

「どの部屋かしら そういえば聞いて無かったわね けどベッドがどうとか言ってたし」
私たちの部屋と間取りがほぼ同じだったので、私は寝室に向かった。

「うっ」 寝室の中は血の匂いと膿の匂いで充満していた。

寝室だけに、換気扇など無いし、かなり気密度の高いマンションなので、
なかなか匂いが抜けないのかしら……けど、もう退院したって言ってたけど……

ベッドの上には顔を包帯でぐるぐる巻きにしている男性らしき人が上を向いて寝ていた。
ベッドの脇の箱の中には血と膿のついた包帯が大量に捨てられていた……悪臭の原因だろう……

昨日綾波なんたらが言ってたように、ベッドの脇に病室にあるような食事用のテーブルの
ついたラックがあったので、その上に私は水を入れたグラスとカレーライスを置いた。

「あの……食事 持って来ましたんで」 私は恐る恐る声をかけた。

「ありがとう……アスカ」 かすれる声でベッドの上の男が呟いた。
何度も洗って使ったのか、少し染みのついた包帯で顔を巻いているので、
余計にさっき聞いた声はわかりづらかった。

え……私の名前を呼んだような……私は記憶を辿ったが、知り合いの筈も無かった。

そんな事を考えていると、男の手が伸びて来て、私は手首をきつく握られてしまい、
私はベッドの上に引き寄せられた。

つーんと来るような血と膿の匂いに卒倒しそうになりながらも、私はもがいていた……

何よっ 何するのよ やめてっ 嫌ぁぁぁぁ




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どうもありがとうございました!


前・後編の予定でしたが、まとまりませんでした(^^;<今に始まった事ではあるまい?

後編に続く!


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