「いいから、少し下がるんだ。そのケーブルが抜けると動かなくなるぞ」
現状をどう説明していいか分からなかったが、俺はとりあえず指示を出した。
「ここが、吉田君のいた世界なんですね……」
少し成長した年頃のシンジのつぶやいた言葉に、俺は身を打たれた。
【変革を求める者】
第71話 「涙 Nパート」
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明日を覗けば闇の中14話外伝
使徒アルミサエルが襲来する直前に時間は少しさかのぼる。
NERV地下のケージに素っ裸でLCL状の液体で包まれた、
シンジとアスカが意識を失って横たわっている。
「んっ……くしゅっ……こ、ここは……」
シンジは冷たい床で目を覚まして、回りを見渡す。
「きょ、巨人? もしかして、これが吉田さんが言っていた?」
暗さに目が慣れると目の前のオブジェクトが巨大な人間の頭部
である事が分かり、動揺するシンジ。
「ねぇ……アスカ……ちょっと、起きてよ……」
シンジは隣で寝ていた裸体のアスカの肩をゆすぶった。
「んっ……な、何? 実験はもう終わったの?」
起こされたアスカは状態が掴めていないようで、眠そうにまぶたをこすっている。
「それより、あまり驚かずに、この上の方をじっくり見てみてよ」
通路の幅はあまり広くもなく、驚いて落ちてしまうのではないかと、
心配してしまうシンジだった。
「え、何? なんで裸なの……え……何か大きなものが……な、何?」
あまりにも巨大すぎて、アスカには一瞬それが人形だと分からずに混乱する。
「落ち着いて。これが、髪の蒼い人が言ってた、エヴァンゲリオンだと思うんだ」
「エヴァンゲリオン? あぁ、他の並行世界ではチルドレンがロボットを操縦してる
って、アレの事? じゃ、ここは吉田のいた世界なの?」
少し落ち着いて来て頭脳が活性化させたアスカは記憶を呼び覚ました。
「僕たちの世界以外では、のきなみ、このエヴァンゲリオンが存在するって、
言ってたから、そうとは限らないと思うよ」
「そう……本来、あの人はイレギュラーだったとか、言っていたわね
「うん。他の並行世界にはいないそうだから、吉田さんがいれば、間違いないんだけど」
「だけど、あの人がわたし達の世界に来ているなら、いないんじゃ……」
二人は顔を見つめ合って黙り込んだ。
「何か意味があって、この世界に飛んで来たんじゃないかしら……わたし達」
「どんな意味何だろう……僕にはまだ理解出来ない」
二人は全裸のまま、何とか情報を整理しようとしていた。
「意味……あの装置では、エヴァの因子を組み込もうとしていたのよね……だけど、
私たちの世界の因子は不完全だとか言ってなかった? まさか、本来の因子が存在
する世界に連れて来られたんじゃないかしら」
少し考えた後、アスカが疑問を口にする。
「連れて来られたって、誰に?」
「そりゃ、あの蒼い髪の子が怪しいわね……装置にも関わってたでしょ?」
アスカは得たりとばかりに手を打った。
「半分正解――」
次の瞬間、二人の目の前の空間のやや上に、蒼い炎のような揺らぎに包まれた、
少女のように見える存在が姿を明かにする。
「なっ……幽霊?」
「バッ……違うわよ? 蒼い髪の子でしょ? って、透けてる上に全裸だけど……」
「ど、どういう事なんですか?」
シンジは咄嗟に視線をそらしながらも、幽体めいた蒼い髪の少女……綾波レイに問いかける。
「もうこっち向いてもいいわよ。転移して来たばかりだったから……」
一瞬で、衣服を身につけた姿に切り替わる、綾波レイ。
「半分正解って、どういう事なの?」
アスカは討論モードに移行して、綾波レイに問いかける。
「そうね……あなたのいた世界のわたしとは、あまり関係がないという事かしらね。
今のわたしは、あなた達を導く為だけに送り込まれたパケットなの。
現在存在している綾波レイとコンフリクトを起こさないように機能を限定しているの」
「余計訳がわからなくなったけど……この世界でエヴァの因子を得るという事だけは、
当たっているのよね?」
「そう……だけど、まだあなた達のDNAにエヴァの因子はインプットされていないの。
まだこのエヴァ初号機のコアの中にいる存在が覚醒していないの。覚醒したら、コアの
中にさえいれば因子がインプットされる筈よ。終われば元の世界に返してあげるわ」
「相変わらず、あんたのセリフは長いのよ……まぁ、理解できたけど」
「ま、まぁ……僕たちの為に来てくれたんだから」
シンジはアスカを何とかなだめた。
「急いで……時間があまりないの。案内するわ」
そう言って綾波レイは浮遊したまま、移動し始める。
「ちょ、この格好でどこに歩けってのよ……」
だが、綾波レイは応えない。
「いいから、ついて行くしかないみたいだね……」
数分後……。
「ここ、どこ? 何か薄暗いんだけど……」
「そうだね……倉庫なのかな? けど、入り口はロックされてたみたいだけど。
綾波レイが触れるだけで電子ロックは解錠されてしまい、
二人は薄暗い倉庫の一角に足を踏み入れた。
「そこの中に予備がある筈よ。プラグスーツに着替えて……。
エヴァとシンクロするためには、その服を着た方がいいの」
綾波レイはキャビネットの電子ロックを解錠して言った。
数分後――二人は綾波レイの指示の元、青と紅のプラグスーツを身につけた。
「なんだか、落ち着かないな……この格好」
股間にはサポーターがあるので、形が分かる訳ではないが、
まるで裸で立っているかのような感覚にシンジは戸惑っていた。
「これで……いいのね……次はどうするの?」
アスカがそう問いかけた次の瞬間使徒襲来を告げるサイレンと放送が館内に響き渡った。
「さっきのエヴァンゲリオンに乗って、使徒と戦闘するのよ。大丈夫。やれるわ」
「使徒と戦闘――」
突然の事にアスカを守りきれるのかと、汗ばむシンジ。
「使徒……こっちの世界じゃ、でっかい化け物なのよね……やるしかないのよね」
アスカは突然の状況だが、戦意を燃やしていた。
「あと、これ……もとの世界に帰ったら、赤木リツコに渡しておいて……」
綾波レイは指先からデータチップのような物を創出してアスカに手渡した。
数分後――初号機の前の連絡通路。
「って、これ……どうやって乗るの?」
「いわゆるロボットとか風じゃないね……」
二人はどうしていいか分からず困惑していた。
「本来は、エントリープラグという物を使うんだけど、今回は直接コアに転送するわ。
最後に何か聞いておきたい事はない?」
綾波レイは少し神妙そうな表情でシンジとアスカの顔をみわたして問いかける。
「ここは……あの人……吉田のいる世界なの? あの人のパートナーは?」
「その答えを私は持っていない……他には?」
アスカはその問いを発したが、綾波レイは首を横に振る。
「そういえば、わたしの世界で最初におかしなできごとが頻発してたの。
それも、あなたが干渉していたの?」
アスカは騒ぎに巻き込まれる直前の不可解なできごとについて口にした。
「それは、別の時空で別のダイバーが警告しようとしていたのね……。
結果的に吉田繁智を送り込めたから、その後は引っ込んだ筈よ……じゃ」
次の瞬間には、二人は初号機のコアに転送されていた。
「エヴァンゲリオンの中なんだね……あ、外が見えて来た」
初号機だけに、シンジは真っ先に感覚を掴み、シンクロしていった。
「ちょっと……何か動き出したわよ?」
どうやら、綾波レイが介入して発進シークエンスを勝手に行っているようだった。
数分後、二人は初号機と共に、使徒の近くまで発射される事となるのだった。
それを見守った後、綾波レイの同位体は掻き消すように姿を消したのだった。
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第71話 終わり
第72話 に続く!
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