「繁智! 危ないっ!」
再びテロリストの方に振り向こうとした時にアスカの声が響き、
ATフィールドを張ろうとしたが、一瞬遅く、
俺の腹と胸に拳銃弾が二発吸い込まれるように着弾した。
【変革を求める者】
第70話 「涙 Mパート」
「ぐぅっ……」
防弾能力もあるプラグスーツを身につけていたのが幸いしたが、
俺は腹への重い一撃を食らって、地面に突っ伏した。
「繁智!」
アスカは俺を気づかいながらも、プラスチック爆弾がなくなったチャンスを逃さずに、
テロリストの女に殺到してマーシャルアーツで組み伏せた。
「くぅ……我々の大義がぁ……あんたらに踏みつぶされて死んだあの子に何ていえば」
アスカによって地面に押しつけられているテロリストは、歯がみをして悔しがる。
「こ、これ……とりあげれば大丈夫だよね……レイ、持ってて」
シンジはアスカによって蹴り飛ばされた起爆スイッチをレイに渡して、テロリストの確保を手伝った。
数分後……ようやく現れた黒服によってテロリストの女は連行されていった。
「繁智……大丈夫?」
アスカはプラグスーツへの着替えを手伝っていたので、大丈夫と知っているものの、
心配そうに俺の方に駆け寄って来て、拘束を解いた。
「それより……使徒を何とかしないと……あの初号機は……ダミープラグか?」
俺は乱れる思考を何とかまとめようとしていた。
「吉田くん、ミサトさんと電話が通じたよ」
シンジは黒服の男と交渉して連絡用の電話機を吉田に手渡した。
「ミサトさん……ですか? すぐにリツコさんを……呼んで下さい……」
俺は痛む腹をさすりながら、ミサトさんに話しかける。
「吉田君……大丈夫なの? リツコなら、すぐ来るから……だけど、
初号機にはシンジ君とアスカが乗っている筈なのに、どうして電話を……」
ミサトは相当混乱してしまっているようだった。
「わたしよ……どうしたの? 簡潔に説明して」
少し経ってリツコさんが電話口に出た。
「テロリストに襲撃されました。負傷しましたが、おおむね無事です。あのエヴァの初号機は何なんですか?」
「整備員によると、シンジ君が中にいる筈だって……だけどプラグは挿入されてないの」
リツコも不測の事態に怯えているようだった。
「他の機体は使えますか? あと、例の遠隔装置は?」
「零号機と弐号機は使えるけど、四号機は装甲を外してメンテ中よ?
遠隔装置はまだ工事中だけど、シンクロテスト用のプラグに入って遠隔操作なら、
コードを書き換えれば、すぐに使えるけど」
「じゃ、これから本部に急行しますので、用意しておいて下さい。
直接相対するのは非常に危険な相手です。あと、剥き出しでもいいので四号機も
用意させておいて下さい。そっちには直接乗ります」
俺は二言三言ほど、リツコさんとの会話を続けた後、電話を切った。
「ストレッチャーはないそうだけど、車までなら皆で運べるから……」
電話が終わるのを待ちかねていたアスカが声をかけてくる。
「ああ……本部まで急ごう……」
俺は車に乗るまでの間、何とか意識を保つ事が出来た。
数分後……俺たちはネルフの地下ケージへと辿り着いていた。
「ちょっと、繁智……大丈夫なの?」
ストレッチャーから降りた俺は不覚にもふらついてしまい、
アスカが心配そうに駆け寄って支えてくれた。
「大丈夫……弾は1ミリも中に入っちゃいないんだ……口径も小さかったし」
俺は四号機に乗る為に、エントリープラグへと近付いていった。
四号機は整備をしていた為、コアが露出してしまっていたが、
俺は躊躇せずにプラグへのタラップを上がっていった。
「それじゃ……わたしたちも……」
「あなた達は、下の実験用のプラグに入るのよ。説明はリツコがしてくれるから」
ミサトさんがアスカたち三人を連れて行くのを見て、俺はプラグに入っていった。
「シンクロ率……86%。正常です」
エヴァとの同調が終わると、マヤさんの声がスピーカーから聞こえる。
普段よりは若干低いが、この程度なら問題ないだろう。
「ミサトさんはいますか? 先に出撃している初号機の様子はどうですか?」
「すごく動きがぎごちないけど、やられてないわ。アンビリカルケーブルが限界に
近付いているけど、大丈夫なのかしら」
「それじゃ、初号機に一番近い所に射出して下さい」
「わかったわ……シンジ君は待機で、あとの二人も、数分で出られるわ」
「了解しました。行きます……ぐっ……」
数秒後、俺の四号機は普段通りの加速で地上へと打ち上げられた。
「あそこか……一体何をやっているんだ?」
四号機を進ませると、アルミサエルと戦闘している初号機の姿が見える。
散発的にパレットガンを撃ってはいるものの、訓練を受けているとは思えない射撃だ。
「一応持って来たが、こんなもの、牽制にしかならないだろうな……」
俺は四号機が持っていたパレットガンを片手で射撃しながら、初号機に近付いて行く。
「何なんだ……」
アルミサエルも何故か戸惑っているかのように様子を見ており、
攻撃するきっかけが掴めないようだった。
「もうケーブルが……プラグが入ってないといっていたが……」
俺は体内のアダムの波動を喚起して、初号機の肩に触れた。
チューニングするかのように周波数を合わせて行くと、
ぼんやりとコアの中に二人の人間の波動を感じた。
「え? 何これ……吉田さん?」
「これは……シンジとアスカ?」
少しすると、はっきり二人の姿を見る事が出来た。
「これ、何なの? どうすればこの、紐みたいな使徒を倒せるの?」
アスカが少し成長したような年頃の女性がパニくりながらも問いかけて来る。
「いいから、少し下がるんだ。そのケーブルが抜けると動かなくなるぞ」
現状をどう説明していいか分からなかったが、俺はとりあえず指示を出した。
「ここが、吉田君のいた世界なんですね……」
少し成長した年頃のシンジのつぶやいた言葉に、俺は身を打たれた。
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第70話 終わり
第71話
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