「何だっ!?」
俺は伏せる前のほんの一瞬……病院の周りの林から対戦車ミサイルが飛び出して来るのが見えた。
目の前にATフィールドにミサイルが激突して爆炎が一瞬爆ぜた次の瞬間、
リフトが衝撃を受けたせいで停止し衝撃で揺れた際に片膝を立てていた綾波の身体が
逆さになってリフトから滑り落ちるのを俺は目撃した。
【変革を求める者】
第68話 「涙 Kパート」
「綾波っ!」
シンジは何とかレイが落ちきるまでに反応し、その足を掴んだ。
「碇君……だめっ」
綾波は空中で宙づり状態となり、制服のスカートが翻り白い下着が露わになったが、守る盾も無く
綾波を支えているシンジの身を案じていた。
「だけどっ!」
まだ三階から飛び降りる程の高さがあり、この状態で手を離せば綾波が大怪我をするのは間違いない
のでシンジは掴んだ綾波の足を離せずにいた。
「早く下げてくれっ!」
俺は傾きかけたバランスを必死に調整しながら石川さんに声をかけると、再びリフトが降り始めたが、
1メートルも降りない内に軋み音を上げてリフトは停止してしまった。
「駄目だっ! さっきの衝撃でどこか故障したらしい! 緊急用の梯子がある筈だから、それを使ってくれ」
石川さんは顔面を蒼白にしながら、そう伝えて来た。
「わかりました……っと、これだな……」
俺は緊急用の縄梯子を解放するためのバーを引いて縄梯子を展開させた。
「ATフィールドの幅を広げるから、急いでっ!」
展開された縄ばしごが無事に地面にまで達したのを見て、俺は率先して縄梯子に足をかけて数段降りてから、
綾波の右手を掴んで縄梯子に手をかけさせた。
(別の方向からもう一発ミサイル撃たれたら倒壊しかねないな……)
俺は回りに気を配りながら縄梯子を下りる。すぐ上を綾波が降りており、シンジも縄ばしごに手をかけていた。
アスカはまだリフトにいたが、シンジをカバーする為にも、もうすぐ降り始める事だろう。
「使徒の出現もあって、ごたついてるけど、今、人を集めさせてい……うっ!」
石川さんが俺たちをフォローするために駆け寄って来た途端、銃声が響いて石川さんは倒れ込んだ。
「石川さんっ!」
地上まで2メートル以上余していたが、俺は一気に飛び降りた。
「大丈夫……防弾チョッキを着ているから……」
銃弾は胸に命中したようだが、血は出ていなかった。
「これを……近くにいる筈だ」
石川さんは肩にかけていた自動小銃を俺に差し出した。
「はいっ……一体どこから……さっきのスナイパーとは別にいるんでしょうか」
俺は自動小銃の安全装置を外して周辺を警戒しながら、石川さんに問いかけた。
「小銃弾だったら貫通している筈だから38口径以下の拳銃弾だろう……」
石川さんはあばら骨にヒビでも入ってしまったようで、脂汗を流して苦しんでいた。
「敵はいないんですか?」
ようやく降りて来たシンジが回りを警戒しながら問いかけて来た。
「ある程度の高所から撃ったみたいだけど、今は分からないな。シンジはこれを」
俺は自分の拳銃をシンジに手渡した。
「はい…………」
一応訓練を受けているものの、人を撃った経験がないだけに、シンジは動揺しているようだった。
「相手はテロリストだ……この日本を……いや、人類を危機から救える可能性のある俺たちを殺そうとする
相手になんか容赦するな……」
「はい!」
シンジは降りて来たレイの側に移動しながら力強く答えた。
守るべき人が側にいれば強くなれるんだな……。
「応援はまだ来ないの? 武器はもうないの?」
しんがりを勤めていたアスカも地上に降り立ち、するどい眼光で周囲を見渡した。
さすが、幼い頃からネルフで訓練していただけの事はあるな。
「むっ……誰だ!」
裏口へと抜ける小径の方で物音がしたので、俺は自動小銃をかまえて誰何した。
「か、看護士です。撃たないで下さい……なっ、何があったんですか?」
通勤途中だったらしい看護士が姿を現し、横たわっている石川さんを見て近付いて来た。
見たところ、銃は持っていないし、通勤用のハンドバッグしか持っていないようだ。
「テロリストの襲撃です! 手当をお願いします」
前に採血に行った時に見かけた事のある看護士だったように思う。
「なっ!」
石川さんの手当に走って来たかと思った看護士が突然バックを俺たち四人のいる場所に放り投げた。
「テロリストですって? 笑わせるんじゃないわよ……。あんた達チルドレンは人類の敵なのよ!
滅殺されるべき存在なのよ」
看護士だと思っていた女性は懐から起爆装置のような物を取りだして本性を現した。
俺たち四人は突然の事になすすべも無く、立ちつくしていた。
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第68話 終わり
第69話
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