「デリカシー無いわね……女性の警備に変えてもらおうか?レイ」リツコはレイの血圧を
計りながら問いかけた。
「問題ありません……」
「血圧は問題無しと……じゃ服脱いで、そこに寝て頂戴 下着は着けてていいから」
「今のままでいいの……ところでレイ 食べるものはちゃんと食べてるわよね……」
必要以上の贅肉などかけらも無いレイの身体を見てリツコは少し嘆息をついた。
「以前より摂取カロリーは1割程度増えた筈です……その分 空手の練習で消費している
と思います」
「そうか シンジ君の作る料理だものね……」
「赤木博士……私に何か伝えたい事があるのでは無いですか?」
どう切り出すか悩んでいたリツコはレイのその言葉に驚きを隠せなかった。
「レイ……あなたに相談があるの……」
少し落ち着きを取り戻したリツコは静かに話し始めた。
【変革を求める者】
第65話 「涙 Hパート」
*珍しく綾波レイ視点です(笑)
「相談……」赤木博士が私に何かを告げる時は大抵、決定事項の告知であり、私に意見
を求める事などあまり無かったので、私は一瞬反応が遅れてしまった。
「ええそうよ……碇……シンジ君との同居は貴方にとっていい結果を引き出しつつある
ように私は考えるわ」理詰めの話しかしない赤木博士のその言葉に私は面食らった。
「ありがとうございます……」どう応えるべきか分からず、私は赤木博士の顔を窺いな
がら何となくお礼を言った。
「それで……これからも貴方達が一つの道を歩いて行こうとするならば……クリアにし
ておかないといけない問題があるでしょう?」赤木博士の口調が少し柔らかくなったも
のの、私に突きつけているその事実は重くのしかかった。
「碇君に……私の事を話すかどうか……ですか」
「そういう事ね……今のままの状況では話しづらいようなら、多少調整はするけど、
原則 碇君にも真実を告げる事を私は勧めるわ もし、あなたの口から聞くのでは無く
彼が真実を知ってしまった時の事を考えるとね……」赤木博士は変わった……以前なら
ここまで親身にはなってくれなかったのに……何が博士を変えたのだろうか……私はと
りとめの無い事を考えつつも、どうするべきかを考えた。碇君は私の真実を知ってもこ
れまでと同じように接してくれるだろうか…………
「碇司令はこの事を?」
「まだ言って無いわ あなたがそう決定したのなら、私から進言するわ」
「私の躯は現在、三十六体ある筈です……私のバックアップとして最低限必要な数と、
ダミープラグの構成部品と考えても多すぎます……現在の三十六体から十二体程度まで
減らす事は可能でしょうか……それと碇君にあの部屋を見せる時は私も一緒にいさせて
下さい それなら多少の意志の疎通やコントロールが可能です」
「確かにね……あなたがいる時といない時では、かなり違うわね……」
「それに、定期的な記憶の移植についても、数が少ない方が精度が上がります……」
「わかったわ……その線で碇司令には伝えておくわ……」赤木博士は私の健康状態を記す
ボードをしまいながら僅かな笑みを浮かべた。
「あの……私と碇君は その……」私はここになってその事を思い出してしまった。
「法的に問題は無いし、DNAの一致は近親気味ではあるけど、強いて言えば従兄弟の
ようなものだし、あなたの決意さえ揺るがなければ問題は無いと思うわ……ま、先の事
だとは思うけどね……」
「ありがとうございました」私は心から赤木博士に感謝する念が沸き起こり、診察台を
降りて頭を下げた。
「今日はシンクロテストも無いし、このまま帰るの?」私がほぼ着替え終わった頃、赤木
博士が問いかけて来た。
「四時半に碇君と待ち合わせて、吉田君の所に顔を出す予定です それから買い物を…」
私は頬の熱くなるのを感じながら赤木博士の問いに答えた。
「そう……それじゃ気をつけて」私は赤木博士に見送られて部屋を出た。
「大食堂に……」私は護衛の黒服に行き先を告げて歩き始めた。
大食堂に辿り着くまでの間に、一人 また一人とサングラスをかけた黒服の男達が増えて
行き、私の前と後ろをガードし続けていた。
さすがに大食堂の中に入って来るのは一人だけだったけれど、入り口の脇には大勢の
護衛がひしめいていたが、気にしても始まらないので、碇君が来るのを紅茶をゆっくり
と飲みながら待ち続けた。
「あ、いたいた」ほぼ飲み終わった頃に私はセカンドチルドレン……いや、惣流さんに
声をかけられた。惣流さんも大量の護衛を引き連れており、護衛全員を残して大食堂に
入って来た。
「何?」私は飲み終えたカップを載せたトレイを手に立ち上がった。
「シンジが繁智の所にお見舞いに行くって言うから一緒に来たのよ シンジもそこまで
来てるんだけど、護衛が多すぎて身動きが取りにくいのよね」気安く碇君の事をシンジ
と呼び捨てにする惣流さんに僅かな抵抗を覚えたものの、それは自分に出来ない事をする
彼女への嫉妬であると私は気づき、その感情を打ち消していった。
私が大食堂を出た頃、ようやく碇君とも合流出来たが、周りには三人分の護衛がひしま
いており、言葉を交わす事も難しかった。
「とにかく移動しましょ このままじゃ邪魔よ」惣流さんが右手を挙げて指示を出してく
れたので、私たちはあまり広いとは言えない廊下をひしめき合いながら進んでいった。
吉田君の病室に辿り着くまで、途中何度も検問があり、その度に護衛全員のチェックを
行ったので、吉田君の病室に着く頃には五時に近くなっていた。
「護衛を増員したのかしらね……NERV内のどこにこれだけの護衛がいたのかってぐら
い……繁智は知らないでしょうけど、学校内にもあちこちで待機してるのよ?」
「教室の後ろにも僕達から常に離れない護衛が一人づつ立っているから、
毎日妙な家庭参観日って感じだよ……その内後ろにずらっと並ぶようになったら、
学校には行けなくなるかもね……スーパーで買い物するのなんかも大変だよ……」
吉田君の病室で安全を確認されたボトルの冷たいお茶を飲みながら私たちは雑談をしていた。とは言っても私は自分から話題に加わる事は出来ずに、たまに問いかけられた時に応える事しか出来ず、そんな自分を少し情けなく感じ初めて来た。
「しかし……現役のチルドレンが全員揃った、今この時 行動を起こせないのなら、
テロ組織にもう余力は無いって事なのかな……俺がテロ組織ならこんな機会を逃さない
と思うんだが……」吉田君がふと真剣な表情で言葉を紡いだ。
「そりゃ、これだけ護衛がいるのよ?仕掛けようったって無理があるわよ」
「何かあったら……多すぎる護衛が邪魔で逆に逃げられないわ」私は漠然と考えていた
不安を口にした。
「それもそうだね……緊急時の対応について護衛の人と話しておく必要があるかも……
今晩にでも僕がミサトさんに話しておくよ」
「何か妙な臭いがする……」私は天井の空調から僅かに異臭を感じ、警告を発した。
「本当だ……ガソリンか何かの臭いのような……」シンジ君は慌てて立ち上がり、丸椅子
の上に乗り、空調の臭いを即座に確かめていた。吉田君が背中の痛みですぐ動けない以上
その行為を咄嗟にしている事が何故か私には誇らしく感じられた。
「病室に近寄れないから、病院施設ごとどうにかしようと言うのか……アスカ 護衛に
緊急待避するように伝えてくれ」そう言って吉田君は痛いであろう背中の事など微塵も
見せずにベッドから起きあがった。
「もう焦げ臭い臭いがするよ」碇君がそう言った瞬間、部屋の照明が僅かに点滅したので
私は慌てて照明の電源を切った。
「気化した可燃ガスを送り込むだけじゃ確実じゃ無いのか」吉田君はそう言って窓を開け
放った。
そして、吉田君が開けはなった窓から外に何か叫んだ次の瞬間 充満したガスが照明の
スパークで点火してしまったらしい部屋が爆発したのか、少し遠くで爆音が響いた。
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よくやったな・・シンジ
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どうもありがとうございました!
第65話 終わり
第66話
に続く!
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