「どうせ、返す言葉が無かったんでしょ……NERVの入り口で一回 NERV本部施設
の病院で二回ともなると、吉田君も安心出来ないんでしょうね……私もNERV本部内の
セキュリティの見直しをさせてる所よ……」
「はぁ……今日中にでも警備部とミーティングしなきゃ……このままじゃ吉田君をうっか
り家には帰せないわ……」
「それは必要かもね……私も頭痛いわ……」さほど量があるとは言えないスパゲッティも
あまり減ってはいなかった。
「責任の所在を明かにしてたら、各部で首が飛ぶのは一人や二人じゃ無いわね……再発を
防止するしか無いんだけど……はぁ」普段は必ず呑み干すラーメンの汁を残してミサトは
トレイを手に立ち上がった。
「あの子達が安心して戦う為には必要な事ね……また今度愚痴でも聞いてあげるわ」
「リツコも今にも噴出しそうな程愚痴が溜まってそうよ んじゃ」
そう言ってミサトは大食堂を出た。


【変革を求める者】

第64話 「涙 Gパート」

*珍しく赤木リツコ視点です(笑)


「さすがに観察眼は伊達じゃないわね……すっかり吹っ切れたのかしら……」
リツコは冷めかけたパスタに慌ててソースや具を絡めながらアメリカにいるであろう
加持リョウジの事を思い出した。 ミサトにも多少の説明はあったのだろうが、NERV
内では加持は裏切り者の二重スパイであり、今も日本国内で捜査されている事を考え
ると旧友のミサトの苦しい思いは、いかばかりかと思うと自分まで暗くなり始めた。

「先輩 例の件、作業完了しました」リツコが食事を終え大食堂を出るとファイルを
手にした伊吹マヤに出会った。
「その事でちょっと話があるの……ついてきて」リツコはマヤに手招きをした。

「こんな所で話ですか……」
「少なくとも盗聴器はついていないわ……」
リツコとマヤは女子トイレのお世辞にも広いとは言えない用具置き場でひそひそ話を
始めた。

「零号機だけじゃなくですか……それは可能です 技術部直接のチェックて名目なの
で、他の機体に同じ事をするのは逆に目立たなくて済みますし……けど、どうしてこ
んな事を?」マヤは最初にこの話を聞かされた時から感じていた疑問を口にした。

「今は詳しい事は言えないけど……これはあの子達の為の処置なの……それとダミー
プラグへの切り替え後の処置はうまく行きそう?」

「ええ……普段のダミーへの切り替えとは違い、その場合に限ってエントリープラグ
を経由しなくてもダミーが起動するようにしました……ですが、ダミーと言うよりは
暴走に近いのかも知れません……ですけど、こういう時に使うのであれば私も……」
マヤは伏し目がちにリツコの顔を見て言った。

「ありがと……マヤ それじゃ処置よろしくね……私はこれから副司令とアポ取って
るから……」そう言ってリツコはマヤを残して部屋を出た。

「時間的には丁度よね」リツコは腕時計をちらと見てから副司令の執務室の扉を叩いた。
「入りたまえ」即座に反応があったのでリツコは扉を開いて中に入った。

「わざわざ時間を作って貰えて恐縮です……」リツコは用意していた資料を副司令の執務
用の机に置いた。

「ふむ……この間少し話は聞いたがね……これがどれぐらい有意義な事なのかが、私には
理解しかねる……」冬月副司令は渋面を浮かべて言った。

「この装置を実装する事によってエヴァが暴走した際、外部からのコントロールが容易に
なると言う側面もあります」

 リツコは以前吉田が何となく言った一言を元にアイデアを膨らませ、ただ一人でこのプ
ロジェクトを極秘裏の内に推し進めていた。そのプロジェクトとはエヴァの遠隔操作を行
うと言うものであった。それによりパイロットはNERV内の安全な所にいながらエヴァを操
縦する事が出来るのでパイロットが戦闘によって命を落とす事も少なく、またチルドレン
が目撃される事態も減る事から現在のように狙われにくくなると言う利点も備えていた。

「ふむ……アンビリカルケーブルで有線接続か……アンビリカルケーブルが無い時は無線
で運用……長時間運用出来ない時はダミーに切り替えか……これなら精神汚染の恐れがあ
る時にパイロットを守る事も出来そうだな……」リツコにこんこんと説明された冬月は次
第に肯定的な反応を見せ始めた。

「ATフィールドの展開も問題無いのでは無いかと思います それに全ての戦闘をこれに
切り替えるつもりは私にもありませんが、先日のようにエヴァに精神的な攻撃を仕掛けて
来るような使徒の時は非常に有効だと思います」

「ここには具体的な事が書かれていないが、費用の方はどうなんだね?」
「アンビリカルケーブルの改造の必要もありませんし、エヴァの通信用のパーツをより高
性能なものに変えるのと、NERV内でパイロットが操作する場所を用意するのに多少かかる
程度だと思います」

「わかった……では碇に伝えておくよ……特殊状況下のみの運用と言う事にしておけば、
碇も反対する理由は無かろう……人道的な面から見ても現在の状況はあまり褒められた事
では無いからな……私はこれから松本でな……碇が今週一杯いないので大変だよ」
そう言って冬月副司令は立ち上がったのでリツコは挨拶をして副司令の執務室を去った。

「これで一つ肩の荷が降りたわね……次は……レイの問題を解決しなきゃね……碇司令の
いない今の内に済ませておくか」時間はまだ午後二時 午後三時半には定期検診の為にレ
イが部屋を訪れる事になっていたので、リツコは私室にて資料の整理などの雑務をしてい
た。

 四時前になって黒服の男に付き添われた綾波レイがリツコの部屋の扉を叩いた。
「待ってたわ 入りなさい」リツコがレイのカルテを取り出しているとレイと共に黒服の
男が入って来ようとするのが見えた。
「ちょっと あなたは扉の前で待っていて貰える? これから彼女の健康診断なのよ」
リツコは黒服の男が入って来ようとするのを制止した。

「ですが……私はファーストチルドレンが外出の際は片時も離れるなと碇司令から……」
第一印象は愚直と言うイメージのこの男は杓子定規にゲンドウの命令を守ろうとしていた
「じゃあなたは彼女がトイレの個室に入る時もついて行くの?シャワーを浴びる時も?」
リツコにこうまで言われては仕方なく、黒服の男はすごすごと部屋を出て行った。

「デリカシー無いわね……女性の警備に変えてもらおうか?レイ」リツコはレイの血圧を
計りながら問いかけた。
「問題ありません……」
「血圧は問題無しと……じゃ服脱いで、そこに寝て頂戴 下着は着けてていいから」
「今のままでいいの……ところでレイ 食べるものはちゃんと食べてるわよね……」
必要以上の贅肉などかけらも無いレイの身体を見てリツコは少し嘆息をついた。
「以前より摂取カロリーは1割程度増えた筈です……その分 空手の練習で消費している
と思います」
「そうか シンジ君の作る料理だものね……」
「赤木博士……私に何か伝えたい事があるのでは無いですか?」
どう切り出すか悩んでいたリツコはレイのその言葉に驚きを隠せなかった。

「レイ……あなたに相談があるの……」
少し落ち着きを取り戻したリツコは静かに話し始めた。




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どうもありがとうございました!


第64話 終わり

第65話 に続く!


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