「どういう事なの?」
「まだ何とも……どうやら彼の病室のベッドに爆発物が仕掛けられていたらしい……
とにかく安全な場所に彼を移すから、貴方もついて来た方がいい」
そう言って石川はもう一人の黒服の男と二人で吉田を抱き上げた。
「繁智……」地下の特別室らしい部屋に運び込まれ、未だ眼を覚まさない吉田の手をアス
カはそっと握りしめていた。
確かに今目の前で息をしている……たいした外傷も無いと言うのに何故ここまで不安なの
か……それは自分の身体に再び起こり始めた変化と関係があるからだと気づいた。


【変革を求める者】

第63話 「涙 Fパート」

*珍しく葛城ミサト視点です(笑)


 そして翌日……
「酷いわね……」葛城ミサトは自ら実況見分を指揮しながら、徹底的なまでに破壊された
病室……いや、かつて病室であったらしい廃墟を見つめていた。

「当日、シーツの変更の為に部屋を出ている間に綿と一緒にプラスチック爆弾を混ぜた
マットごと交換した模様です シーツの交換は他の部屋でも行われていたようなので、
あまり不審に思わなかったそうです」事故の調査を担当する部署の男性が葛城ミサトに
説明を始めた。

「二回目よ……しかもNERVのお膝元で……警備の方にも問題あるんじゃ無いの?」

「さぁ……私には何とも……今後は爆発物のチェック等を入念に行うしか無いのでは無
いでしょうか……それも複数系統で……」

「それNERVの職員でもすでに信用出来ないって意味?」ミサトは腕を組んで言った。

「断定的な事は言えませんが、二回もこのような事が起こるとなると手引きしている者が
いると想定するのは当然では無いでしょうか?」調査のチェックリストに何かを記入して
調査官が応えた。

「そうで無ければセキュリティに問題があるって事よね……どちらにせよ、何とかしない
と安心出来ないわね……さっき、複数の系統でチェックを行うべきって言ったわよね……
あなたの部署にその一つの系統を担当して貰うよう上申するけど、可能かしら?」

「一人貼り付ける事は出来ると思います 上申して頂いて結構ですよ 事前に判明するに
こした事は無い訳ですし」

「それじゃ、明日にでも上申するわ その時は宜しくね ではレポートがまとまったら、
私の所にも回してちょうだい」そう言ってミサトは破壊されつくした病室を後にした。

「家に帰ったら帰ったで家が狙われるか……その警備を考えたらここにいる方がマシか」
ミサトはぶつぶつと呟きながら吉田の新しい病室に向かった。

「失礼するわよ〜」ミサトは吉田の病室をノックして返事も待たずに中に入った。

「ああ……ミサトさんでしたか」吉田は眠そうな顔でミサトを迎えた。眼の下に隈も出来
ており、吉田らしからぬ表情を湛えていた。

「どうしたのよ……夕べ眠れなかったの?」ミサトは病室内に入ってまじまじと吉田を見
て問いかけた。
「ええ……まぁ あ、おかけ下さい」吉田はパイプ椅子を指さして言った。
「そんなにショックだったの?」ミサトは椅子に腰を降ろして尚も問いかけた。
「ここでさえ二度も襲撃を受けるのなら……家に帰った時どうやれば守れるのかと……」
吉田の危惧は当然であったが、ミサトはすぐに反応する事が出来なかった。

「大丈夫よ……今も警護してる筈だし、そう簡単にはチルドレンやその家を突き止められ
ない筈よ」自分でも心から信じられないような詭弁をミサトは弄してしまった。

「警護している人はNERV本部から交代制で見守ってくれてる訳ですよね……」

「ええ、そうよ 3交代制で24時間警備しているわ」

「あの目立つ黒塗りの車がNERV本部から出てくる所を後を付けるのを数十回やれば、
チルドレンの住所なんてすぐ分かるんじゃ無いんですか?」

「あ……そうかも知れないわね……シンジ君達の顔も割れてたみたいだし……」

「逆に目立つ車じゃ無く、どこにでもありそうなバンとか乗用車で護衛して、あの黒服も
やめてカジュアルな服で警備した方がいいんじゃ無いですか?何かあった時の為にはこれ
までのスタイルの警備でもいいと思いますけど」次から次へと不備を突かれてミサトはこ
れまで、いかに深く考えずに警備計画を立てていたかを見透かされてしまい動揺した。

「吉田君……昼食だ 毒物等のチェックは済んでる」ミサトも以前会った事のある、石川
カズヒロが昼食の入ったトレイを手に病室に入って来た。

「もうそんな時間なの……それじゃ失礼するわね……その件は上とも話してみるわ」ミサ
トはそう言ってそそくさと病室を出て行った。

「はぁ……NERV作戦部長の私が押されっぱなしじゃ無い……」ミサトは本部施設の大
食堂で昼食を取りながらぼやいた。

「あら、実況見分は終わったの?」赤木リツコがパスタの載った皿とトレイを手にミサト
の前の席に陣取った。
「それはほぼ終わったんだけど……吉田君に警備体勢の事とかでちょっち指摘されてね」
ミサトは伸びかけたラーメンを啜って言った。

「どうせ、返す言葉が無かったんでしょ……NERVの入り口で一回 NERV本部施設
の病院で二回ともなると、吉田君も安心出来ないんでしょうね……私もNERV本部内の
セキュリティの見直しをさせてる所よ……」
「はぁ……今日中にでも警備部とミーティングしなきゃ……このままじゃ吉田君をうっか
り家には帰せないわ……」
「それは必要かもね……私も頭痛いわ……」さほど量があるとは言えないスパゲッティも
あまり減ってはいなかった。
「責任の所在を明かにしてたら、各部で首が飛ぶのは一人や二人じゃ無いわね……再発を
防止するしか無いんだけど……はぁ」普段は必ず呑み干すラーメンの汁を残してミサトは
トレイを手に立ち上がった。
「あの子達が安心して戦う為には必要な事ね……また今度愚痴でも聞いてあげるわ」
「リツコも今にも噴出しそうな程愚痴が溜まってそうよ んじゃ」
そう言ってミサトは大食堂を出た。

「午後からは作戦部のミーティングか……頭痛いわ」ミサトは廊下を歩きながら呟いた
そして、加持リョウジが日本を去る時に手渡されたカプセルが懐にあるのを確認し、
その時加持が言った言葉を思い出した。「彼等を守ってやってくれ……」と




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どうもありがとうございました!


第63話 終わり

第64話 に続く!


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