「使徒の姿は見えないし、空に向かって撃ってるし、どうなってるんだろう」
さっき男から通信機を取り上げてくれた人が不安気に呟いた。
その時、さっき床に落としてしまっていた僕の携帯が鳴り響いた・
僕は慌てて拾いあげて電話に出た。
「シンジ君? 大丈夫?」
「あ、ミサトさん ええ何とか大丈夫です 線路を爆破した犯人を確保しました」
「そう!? よくやったわね 今迎えのヘリを出すから、もう少し待っててね」
「分かりました あ、犯人はテログループみたいだから、気を付けて下さいね」
「分かったわ じゃ!」ミサトさんの声がヘリのローター音でかき消されそう
になりだした頃、電話が切られた。
【変革を求める者】
第60話 「涙 Cパート」
*今回もシンジの視点でお送りします
ミサトさんとの通信を終えて携帯を懐に収めた時、僕は車内の雰囲気が一変して
いるのに気づいた。 これまでの殺気めいた殺伐とした雰囲気が緩和されているように。
僕の服の裾を握り、僕の背後に立っていた綾波も車内の雰囲気の変化に気づいたのか、
僕の背後に隠れたままではあるが、服の裾をもう握ってはいなかった。
「しかし、何でこいつはそんな扇動したり、列車を止めたりしたんだろうな」
扇動していた男をネクタイで後ろ手に縛り、床に押しつけてくれている男性がふと疑問
を漏らした。
「そうだよな 第三新東京市を守ってくれてるエヴァのパイロットに危害加えて、
その結果、使徒の襲来で自分が死んでしまったら意味無いじゃ無いか」
別の男性も首を傾げて呟いた。
「エヴァの操縦者は……チルドレンは悪魔なんだ……そんな事も分からないのか」
拘束されている扇動していた男が縛められていながら、顔を上げて叫んだ
その時、少し離れていたエヴァ四号機が再び活動を始め、照射される光線を避けな
がらポジトロンライフルを撃つ姿を、乗客の殆どが幻想的な物を見ているかのような
表情で眺めていた。 あのような巨大な兵器を操るチルドレンの畏怖と言うものは
このテロリスト程で無くても第三新東京市の市民全体が多かれ少なかれ持っている
のかも知れないと僕は思った。
その時、どこからともなくヘリの音が響いて来た 使徒と戦闘している四号機の邪魔
にならないように遠回りしているのか、なかなか姿を現さなかったが、数分後
電車の高架付近にてホバリングを始めた頃、僕の携帯電話が鳴り響いた。
「迎えに来たわよん 風も無いみたいだし、外に出れそう?吉田君とアスカ
が出ているとは言え、まだ何があるか分からないから、収容したいのよ そのテロ
リストの事もあるしね」
「分かりました 最後尾の列車の非常用脱出口のすぐ側にいますから出れます
あと、乗客の避難の手はずはどうなってますか?」
「今、準備させてるわ 使徒が片づき次第 乃至30分以内には救出するわ」
「分かりました ありがとうございます」僕はそう言って電話を切った。
「もう皆さんの救出の準備も整ってるようです もう暫くお待ち下さいとの事です」
僕はジェスチャーで綾波に非常脱出口のロックを外すように伝えて、その間に
乗客に説明を行った。
綾波の操作で最後尾の非常脱出口が開き、外からの風が車内に吹き込んで来た。
僕達だけ先に逃げる事を非難されるかとも思ったが、非常事態である事を僕は
再認識して、感傷的にならないように内心留意した。
ミサトさんの乗るヘリが近づき、ホバリングを続け、縄梯子が降ろされたのを
見て、僕は電車を降りる事を決意した。
「その……ご迷惑をおかけしました……」
僕はそれだけ言って、綾波に先に降りるように促した。
綾波は黙って頷き 非常脱出口から 高架のコンクリート部分に降りていった。
そして、僕も非常脱出口の取ってに手をかけた時、背後から声がかけられた。
「がんばれよ!」扇動していた男を縛めている男性がそう口を開くと、それまで
押し黙っていた乗客達が次々と口を開き、僕達に声をかけてくれた。
僕は涙腺が少し緩むのを感じながら、黙って頭を下げて 電車を降りた。
「僕達が使徒から守っているのは……血の通った……人間なんだ これまで、
その事に気づきもしなかったよ……」綾波と共にヘリの待つ場所まで歩きながら
僕はそう一人ごちた。
「…………そうね」綾波は最初無表情を装っていたが、僕の言葉が終わると、
僕の方にそっと振り向いて、少し表情を緩めて笑顔らしき物を作って言った。
僕は頷き 胸を張ってヘリの待つ場所まで綾波と共に歩いていった。
その翌日の日曜日の昼下がり……
僕はレイと共に吉田君のお見舞いに行く為、街に出かける所だった。
ミサトさんは昨日お見舞いしたそうだし、昨日のごたごたが続いている為、
休日返上で働いているそうなので、僕達だけで行く事にしたのだが……
僕とレイを前に二人 後ろに二人 普段の半分ぐらいの距離でびっしりと警護され
ており、逆に落ち着かなかった。
「お見舞い何にしようかな……外傷だけって言ってたから食べる物でもいいらしい
けど、吉田君の好みとか知らないしなぁ……」
僕とレイは黒服の護衛と共にデパートの地下コーナーにてお見舞いの品を物色していた。
「バナナカステラ」
それまで黙っていた綾波がぼそりと呟いたので、僕は綾波の 方を向いた。
そこでは過去に一度叔父さんの家にいた時食べた事のある、バナナ カステラが実演販売されていた。
目の前で焼かれているバナナカステラは独特の 匂いを漂わせており、僕は唾を飲んだ。
「じゃ、これにしようか?」
僕は綾波にそう問いかけると、綾波は無表情のまま頷いた。
「えーとこしあんと粒あんとカスタードとバナナ果汁つゆだく があるのか
バナナ果汁つゆだくってどんなのだろう……けど、病室で食べるのにつゆだく
はあまり良くないな…… そういえば、吉田君 前にカスタードが苦手だって
言ってたな じゃ、こしあん4つと粒あん4つ下さい」
「はいよっ」威勢のいい声を上げて焼いていた職人がアツアツのバナナカステラ
を紙袋に入れてくれた。
僕達は買い求めたバナナカステラを手にデパートを出て、吉田君が入院している
NERVの施設まで、そこからは黒塗りの車に載せて貰う事にした。
昨日の今日で電車を使う気にはあまりなれなかったからだ。
NERVの施設は普段以上に厳重に警備されており、吉田君の病室に辿り着くまで
3回もIDカードの提出を求められた。
ようやく病室の前に辿り着き、ドアを叩くと中から吉田君の声が返って来た。
「失礼します」僕はそう言って綾波と共に入っていった。
「シンジか…それにレイも……わざわざお見舞いに来て貰う程の怪我じゃ無いん
だけど……ありがとう」吉田君は背中が痛むのか、ベッドから頭を上げずに言った。
僕達がベッドに近づいていくと、近くに控えていたらしいアスカがすかさず丸椅子
を二つ持って来てくれた。
「ありがとう……あの これお見舞い 温かい内にどうぞ」僕はそう言ってアスカ
にバナナカステラを手渡した。
「ありがとう わっ何?これ? まだ熱いわよ」アスカは紙袋を開けて目を丸くした
「ん?アスカは知らないのか……これはバナナカステラって言うんだ あ、飲み物を
用意してくれるかい?アスカ」 「いいわよ 繁智はいつものでいいわね」「ああ」
まるで夫婦のように言葉のリレーが交わされているのを見て、僕は二人の関係がうまく
いっている事に気づいた。 いつかは僕も綾波と…………と少し想像したが、綾波が
今のアスカのような対応をする訳も無く、僕達は僕達だと思い直した。
「で、コーヒーと紅茶どっちがいい?」さっきからアスカが問いかけていたようだ
が、物思いに耽っていた僕はすぐに気が付かなかったので、慌てて紅茶をお願いした
レイも同じ物を頼んだようで、アスカは頷いて部屋を出ていった。
数分後 トレイに紙コップを載せてアスカが現れ、僕達もバナナカステラをご相伴
する事になった。 もとよりそのつもりで自分達の分を別に買ってはいないのだが(笑)
「寝たままじゃ食べにくいわよね ちょっと待って」そう言ってアスカさんは
ベッドサイドのボタンを押し、吉田君が寝ているベッドの角度を変更していた。
僕は熱い紅茶を左手で一口啜ってから一口バナナカステラにかぶりついた。
「これはこしあんか……」
「これが粒あん? これ苦手……」綾波も一口食べ、少し顔をしかめた。
「あれ、綾波粒あん苦手だったの?言ってくれれば全部こしあんにしたのに」
「よく分からなかったから……」
「じゃ、これと変える?僕は粒あんでも問題無いし」
僕が何気にそう言うと、綾波は黙って頷いた。
お互い左手に紙コップを持っている為、少し苦労してバナナカステラを交換し、
粒あんのバナナカステラを一口食べた時、自らの行為に気づき驚愕した。
「これって……間接キスって奴じゃ……」 だが、綾波は気づいていないのか
平気な顔をして、僕と取り替えたこしあんのバナナカステラを頬張っていた。
「僕の気の回しすぎか……」僕は心を落ち着かせようとした。
「シンジぃ……あなた達もなかなかやるじゃん……もぉらぶらぶって感じよ」
アスカがその行為を見逃す筈も無く、まるでミサトさん直伝かのように冷やかして来た。
「ん? 何が? どうかした?」吉田君はよく分かって無いようで首を捻っていた。
「気づいて無かったの?繁智……まぁいいか」
数分後 紅茶とバナナカステラを食べ終え、紙コップをアスカが片づけている間に
僕は繁智君に挨拶して帰るべく、丸椅子から立ち上がった。
「また、空手の練習出来なかったね けど、最近はダンベルとか買って来て
筋トレとかやってるから、練習再開するまでに筋力付けておくよ
それじゃ、今日の所は失礼するよ」僕がそう言うと、吉田君はベッドから右手を
出したので、僕は握手を交わした。
「あら、もう帰っちゃうの? もっとゆっくりしていけばいいのに」
丸椅子を部屋の隅に片づけていると、アスカが戻って来て、僕達を見て言った。
「お二人の邪魔しちゃ悪いですしね」僕はさっきの復讐をすべく笑みを浮かべて言った。
「むっ……シンジも言うようになったじゃない……それじゃ明日 学校でね」
僕とレイは病室を辞して、待たせている車の所まで来た道を帰っていった。
「ん?何だろう……何か右の掌が熱いような……」僕は右手に違和感を感じたが、
途中で右手で紅茶を飲んだ事もあるのを思い出し、納得した。
「これからどうするの? 碇君」
「帰って勉強かな……授業にも遅れがちだし……それと筋トレ」
「そう……じゃ、帰りましょ」そう言って綾波は僕の手を取り繋いだ。
「うん……」僕は自然に綾波の手を右手でそっと握りかえした。
*次回から再び吉田視点に戻る予定
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今回のレイ ヴァニラ・H入ってない?
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した いや、マジで
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
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どうもありがとうございました!
第60話 終わり
第61話
に続く!
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