「いつ使徒が襲来するかわかりません……今日中かも……今月中なのかも……」
「わかったわ こちらでも出来る限りの用意をしておくわね……」
「お願いします……そろそろ時間か じゃアスカ、道場に行こうか?」
「そうね……あっ」アスカはパイプ椅子から立ち上がろうとしてバランスを崩した。
俺はアスカの腰に素早く腕を廻してアスカが倒れるのを阻止する事が出来た。
「凄く顔色が悪い……アスカ 大丈夫なのか? アスカ!」
「すぐ医局の者を呼ぶわ 取りあえず寝かせておいて」
その時であった NERV全域に警報が鳴り響いたのは……
そう。 第十五使徒 アラエルの襲来であった。
【変革を求める者】
第54話 「せめて人間らしく Cパート」
「赤木博士 誰か人を呼んでアスカを病室まで運んで下さい 俺は出撃します!」
「わかったわ 取りあえず着替えてケイジまで来て頂戴!」
アスカを置いて行く事に一抹の不安を感じないでも無かったが、俺がアスカの傍にいて
戦闘を放棄している間にやられては話にならないので、俺は涙を飲んで走り出た。
赤木博士の私室からケイジ近くの更衣室までは走って三分ほどで、
俺はなんとか迷う事なく更衣室まで辿り着き、プラグスーツに着替えた。
まだシンジやレイは到着していないようだった。
俺はプラグスーツに着替えるとケイジに駆け込み、エントリープラグに乗り込んだ。
そして、エヴァ四号機とのシンクロを終えた頃、通信が届いた。
「吉田君! 事情は聞いたわ アスカは病院に搬送中 シンジ君とレイはまだ到着して
いないわ」通信ウインドウが開くと、葛城三佐の切迫した声が響いて来た。
「出撃命令は出てるんですか?」
「まだ出ていないわ いつでも出撃出来る状態で待機していて頂戴!」
「分かりました 武装ですが四号機にはまだポジトロンライフルが支給されて無いので
他の機体の分を廻して貰えるように連絡お願い出来ますか?」
「わかったわ それと使徒の諸状況のデータを送るわね」
「はい……高度は110kmか……やはり届かないか そうだミサトさん 近くに精密射撃の
補正が出来るような人工衛星はありませんか?」
「んー近くには来てないわね…… あ 15分後ぐらいに範囲内に入る衛星があるけど
使徒に目を付けられたら終わりだし、5分ぐらいしか持たないかも それでもいい?」
「必ずしも使うかどうか分かりませんが準備をお願いします」
「きゃっ 何!?」
次の瞬間 通信ウインドウにさざ波が走り、電波が途絶えた
「何事ですか?」
俺は四号機の傍にいるであろう作業員に外部スピーカーを使って問いかけた。
「よく分かりませんが、この辺り一帯の通信機や精密機械が使用不可になっている
ようです 何らかの攻撃を受けたと思われます!」
見覚えのある整備班の四号機担当の人が俺の問いに答えてくれた。
「電源は落ちてないのに使えないんですか?」
「光ファイバーか何かを使った有線での連絡方法は無いんですか?」
「あるにはあるんだが、どうやらその管制装置がやられてる模様で使えません」
「このままここで待っていても埒はあかんが……そうか!」
俺はアラエルが何をしようとしているのかに気づいた。
恐らく地下のアダムと交信を試みているのでは無いだろうか!
ぼーっとしてるとアダム(リリス)に照準を合わせられるかも知れない」
「LCLを注入して下さい! 出撃します」俺は外部スピーカーを使って指示を出した
「しかし、まだ出撃命令は出て無いですが…… その命令すら出せない事態ですね
分かりました LCL注入します。 おいっゲートが開くかどうかチェックだ!」
「遠隔では開きません! 管制室へ直接スイッチを入れに行けば大丈夫な筈です!」
整備員の一人がすぐに確認して叫んだ。
「吉田さん どのゲートから出撃しますか?」
四号機担当の整備員が俺に問いかけて来た。
「第三新東京市のほぼ中心でいいです あまり選択出来ないならどこでも!」
「分かりました 誰かスイッチを入れて来い!」
「四号機用のポジトロンライフル 用意出来ました 接続完了!」
「ゲートいつでも開けます」
「吉田君っ シンジ君とレイは途中で足止めを食らってるみたいよ! 取りあえず
一人で出撃して頂戴!」葛城三佐が走り込んで来て叫んだ。
「分かりました 四号機 出撃します あ、ミサトさん ロンギヌスの槍の使用許可を
今の内に取り付けておいて下さい お願いします」
「ロンギヌス? 分かったわ司令に伝えておくわ……いや、何としても確約させるわ」
「了解 四号機 発進!」
次の瞬間 四号機はカタパルトから打ち出され、何とか無事に第三新東京市の中心部に
出撃した。
第三新東京市の中心にはアラエルから発せられた光がオーロラのように発光していた。
「衛星が近づいて来るまで、あと10分少しか……それまで時間を稼がないとな」
俺はエヴァの照準システムを使ってアラエルにポジトロンライフルを向けた。
仮に命中しても効力は得られそうも無いが、いつまでもアダムとのコンタクトを
試みさせているとどんな事になるのか分からないので、俺は自らを囮とする事にした。
精神攻撃に耐える為、必要以上な程にATフィールドを張り巡らせてから、
俺はポジトロンライフルの第一射を行った。
現状では光学系の索敵しか行えないので命中したかどうかは分からないが、
アラエルが気づくだろうと俺は信じていた。
数秒後 思惑道理 アラエルから発せられる光は段々と集約され四号機に集中して来た
まるで子供の虫めがねで焼き殺される蟻のような気分と言うべきか…………
熱は感じなかったが、アラエルが俺を探る精神的な波をも放って来た。
恐らくは100%以上張り巡らせているATフィールドのおかげだろうか、
まだそれ程強烈なものでは無かった。
俺はアスカやシンジと違って それ程トラウマがある訳じゃ……
と一瞬油断した次の瞬間 アラエルからの光は抗しがたい程の強さで襲いかかって来た
”どこが違うの?” アラエルからの精神波長は母の声と言う形で襲って来た。
”あなたは捨てられたんでしょう? それのどこが違うと言うの?”
「そう……アスカやシンジと何も変わらない………親に見捨てられたと言う点では……」その事にこれまで気づいていない訳では無かった ただ認めたく無かっただけなのだ…
子供は俺と姉 二人いたのに母親はどちらも手元に置く事無く、去っていったのだ……
姉とまだ幼い俺を残して……本当に俺を愛していてくれたのならきっと…………
何故連れていってくれなかったんだ 母さん! 何故だ……なぜなんだ…………
なまじこれまでその事を半ば忘れていただけあって、その思いを俺は抑える事が出来ず
奔流のような流れに押し流されそうになりかかっていた。
親父は母さんがいなくなる原因を作った存在だと言う事が分かって来た頃から、あまり
良い感情を持てなくなっていたし……同じ捨てられた存在の姉がいてくれなかったら、
今頃俺は…………
こんな俺がシンジやアスカを救おうだなんて思っていただなんて……
自分の事に眼を瞑って現実に背を向けていただけじゃ無いか……シンジやアスカの事は
単なる逃避では無かったのか……こんな俺にアスカを幸せにする事が……出来るのか…
母に捨てられるような俺が……自分で自分を愛する事も出来ない俺が……………………
俺は精神の迷宮に迷い込んでしまい、同じ考えの堂々巡りを続けていた。
それを少し覚めた眼で見つめている自分自身もいたが、何の気力も沸いて来なかった。
どれだけ時間が経過したのかも分からなかった。 アラエルの攻撃が俺に集中したので
回復している通信ウインドウから誰かの叫び声が聞こえていたが耳には届かなかった。
混濁した意識の中 俺は立っている事すら辛くなり、地面に突っ伏そうとしていた。
「何やってるのよ繁智! あんたはそんなに弱い人間じゃ無いわ!
自らの弱さを知って尚かつそれに立ち向かって行ける人間の筈よ!」
俺はアスカの叫びに 正気を取り戻した。
どうやら通信機器が復活していた為、
俺がぶつぶつ言っていた事は全て聞こえていたようだ。
「今、ロンギヌスの槍を取りに行ってるから、少し時間を稼いで頂戴!」
「分かった! ありがとう……アスカ」
俺は足下に落としてしまっていたポジトロンライフルを拾い、軽快なフットワークで
アラエルからの光を浴びないように移動しながら牽制の為にポジトロンライフルを
撃ち続けた。 もう母の幻影が現れる事も無かった
「いつか……アスカと結婚する時には……きっと探し出して会いに行くよ……母さん」
俺は何とか妄執を吹っ切る事が出来た。アスカがいてくれたおかげだと俺は実感した。
御名前
Home Page
E-MAIL
ご感想
今のご気分は?(選んで下さい)
長い正月休みだったな・・尾崎
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
内容確認画面を出さないで送信する
どうもありがとうございました!
第54話 終わり
第55話
に続く!
[第55話]へ
[もどる]