「明日かね……明日は昼から西地区の見回りでね……ま 赤木君にでも言って君が本部
にいる時に私の予定が開いている時って事でいいかね?」
冬月副司令は上等そうなハンカチをあごで挟んで手を洗いながら言った。
「ええ それで結構です それでは失礼します」
「ああ……」

 俺は更衣室で着替えながら何かひっかかるものを感じていた。
「西地区……西地区 西の第八管区!」
俺は赤い海で得た情報で冬月副司令がゼーレに拉致された時の事を思い出した。
そうだ 何故忘れていたんだろう ここで加持さんを止める事が出来なければ、
全てが無駄になってしまう 俺は携帯電話を取り出して、石川氏から聞き出して
おいた加持さんの電話番号をメモリーから引っ張り出した。


【変革を求める者】

第49話 「ネルフ、誕生 Bパート」


 地表より数百メートル下…採光部より降り注ぐ僅かな光が交差している場所。
元々自然に作られた場所でも無く、また使徒迎撃の為に上部は装甲板で覆われ、
時間になるとビルが上から生えて来る そんな場所にスイカ畑は僅かな己の存在
を誇示するかのように存在していた。 

「ここにいたんですか……探しましたよ」
俺はスイカのツタを踏まないように気をつけて加持氏に近づいていった。
「ああ 君か よく此処がわかったね」加持さんはじょうろを手に振り向いた。
「加持さんがここでスイカを育てている事は知ってましたが、場所は知りません
でしたから、施設課の人に日中を通して一番採光部からの光が得られる場所を聞
いてきました って言うか携帯の電源入れておいて下さいよ」
「ああ悪い悪い 非常事態ならサイレンが鳴るから、つい ね」
そう言って加持さんは懐から携帯電話を取り出してスイッチを入れた。

「ゼーレからのオーダーがそろそろ来ると分かっていたから切っておいた……
違いますか?」半ばカマをかけるつもりで俺は加持さんに問いかけた。
「君には何度も驚かされたが、今日程驚いたのは初めてだよ」
「動揺の色も見せずにそんな事言われても信じられませんね……で、どうなんです?」

「概ね当たっているよ まだオーダーは来ていない…が、時間の問題だと思ってるよ」
「あなたが命を賭してまで……ミサトさんに引き金を引かせまでして得ようとした真実
……その天秤で計れる程の代物じゃありません オーダーを拒否……出来ませんか?」

「あからさまに反逆したのでは、俺が二重スパイだと言う事をNERVに密告され、
俺が手引きしないのなら、手荒な手段で冬月副司令は拉致されるだろうな……」
「どうせ冬月副司令や碇司令はあなたがゼーレの意向で動いている事は知っている
んですから、この際カミングアウトしたらどうですか?」
「物凄い事を言うな 君は…… で、取りあえずどうするつもりなんだい?」
「取りあえず俺が考えている案を実行するのには、赤木博士と冬月副司令の協力が必要
です まず赤木博士に会って計画を説明します」
俺は前から暖めていた加持さんを生かす策を実行に移す時が来た事を悟った。

15分後 俺と加持さんは電話でアポを取り、赤木博士の私室にいた。
「珍しい組み合わせね 私に二人がどんな相談があるの?」
赤木博士は机の上に置いてある資料を片づけながら振り向いた。

「ここは盗聴の心配無いですよね?」
俺は話を切り出す前に、まず赤木博士に事態の緊迫性を知らしめる為に警告した。

「可能性はゼロとは言い切れないけど、毎週のようにチェックしてるわよ?」
少し心外そうな顔をして赤木博士が答えた。

「じゃ話を始めたいと思います 明日 冬月副司令が拉致される予定です」

「明日……予定って……ああそうね 前回はそうだったのね」
赤木博士は少し混乱していたが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「前回は加持さんが手引きをしました。 その後副司令を解放したものの、NERV
に消されてしまいました 今回はそうならないように手を打ちたいんです」
俺がそう言うと赤木博士は加持さんの方をちらっと向いた。

「まだゼーレから指令は来ていないが、恐らく明日の副司令の巡回を狙うように
言って来ると思う」加持さんは腹をくくったのか自らが二重スパイである事を認めた。

「それで、私にどう協力しろって言うの?」
「副司令が連れていかれる先には人類補完委員会やゼーレとのコンタクトを取れる装置
がある筈です それを使ってゼーレの本拠地の場所を探知して貰いたいんです。
加持さんの話ではその秘密基地には二、三人しか護衛がいないそうなのですが、
俺も赤木博士の護衛としてついて行きます お願い出来ませんか?」

「確かに私じゃ無いと出来ない事のようね……いいわ 私は明日 松代のMAGI二号
機のチェックに行く予定だったんだけど、それをキャンセルするわ」

「ありがとうございます それで、副司令を拉致するまではゼーレのシナリオのままで
副司令の救出は俺がやります。 加持さんはNERVに二重スパイが発覚した事にして
アメリカに逃げて貰います その時までに赤木博士がゼーレの本拠地の場所を見つけて
貰えてれば、ゼーレの本拠地に侵入出来る筈です」

「しかし、作戦に失敗したスパイを生かしておいて 更に本拠地まで迎えてくれる程
ゼーレは甘く無いが、それはどうするんだ?」
「最初の人間 アダムを加持さんが持っていると言う事にしてそれを手みやげにして
下さい 俺の体組織を培養すれば ごまかせるだけの反応値は出ると思いますし」

「で、ゼーレの本拠地で俺は何をしたらいいんだい?」
加持さんは煙草を一本くわえて火を付けながら言った。

「もうエヴァの量産型は10体ほど出来てる筈です。 その破壊は難しいでしょうが、
ダミープラグに使われる予定の 渚カヲルと言う少年のクローン体を全部破壊して下さいそうすれば、ゼーレが量産型エヴァでNERVを攻撃すると言う最悪の事態を止める事が出来ると思います」

「……わかったわ で冬月副司令にはいつ話すつもり?」
「敵を謀るにはまず味方から……加持さんが本当に裏切ったと思わせておいた方がいい
と思います。 事が終わった後で説明はしますけど」

「一度碇司令とも話をしないといけませんけど下手な事言ったら消されかねませんし」

「じゃ早速準備しなきゃね……忙しくなるわね……」
「葛城にはまた心配かけちまうが…仕方無いな いつかは説明出来る時も来るだろう」
「それじゃ、そういう事でよろしくお願いします あと、護身の為に銃とか用意して
おいて下さいね アスカが心配してると思うので、俺は帰ります」
俺はそう言って立ち上がり、赤木博士の私室を出た。

 そして翌日……(拉致されるまでの経由は本編準拠)
打ち合わせ通り冬月副司令が拉致された頃、俺は第三新東京市の西の外れにある、
小高い丘陵で赤木博士と待機していた。
今、ここで加持さんを生かす事が出来るか がこの後の展開にかかっている
俺は少し緊張しながらもその時を待っていた。




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第49話 終わり

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