「約束するよ 約束するから…… 泣くなよ」
俺はアスカの髪を撫でながら鼻声になっている事に気づいた直後 自分が涙を流している事に
気づいた。 俺もアスカがいないと駄目な躯になってしまったようだ……
これは弱さなのだろうか……いや、二人でこうして支え合う事は決して弱さじゃ無い
そう信じて俺はそっと唇を重ねた。
…………………………………………
結局朝までアスカは俺のベッドで寝ていく事になった……
翌日 アスカが着ていた服には皺一つ入っていなかったとさ……


【変革を求める者】

第48話 「ネルフ、誕生(仮)Aパート」


 退院した翌々日の昼休み 俺たちは屋上でいつものように昼食を取りながら雑談
を交わしていた。
シンジとレイは昼から実験の為、昼食も取らずにNERVに赴いていた。

「そうか……それで三週間もな……大変やったな 吉田」
フェンスに背中を預けてコロッケパンを囓りながらトウジは何度も頷いた。
「いや、しかし吉田までもがエヴァのパイロットになるとは……」
ケンスケは眼鏡を光らせながて、品定めをするような目つきで俺を見ていた。
「こらっ 相田君 声が大きいわよ そういうの秘密なんでしょ?」
「そりゃそうだけどさ、大半の人がもう気づいてると思うぜ だって三週間もの間、
アスカがいつも吉田のいた席ずっと見つめ……ごめん」
まだ今ひとつ表情の晴れないアスカを見てケンスケは己の無神経さを恥じた。

 退院して来た昨日はいろいろあったので、まともにアスカと話す時間も無かったが、
もう元通りのようには見えたのだが、俺のいなかった三週間の間の心労が抜けきって
無いようで、俺は少し気がかりではあった。
「そうそう 三週間も休んだんだから学校の勉強に追いつくのも大変じゃ無い?
まぁ吉田君は元々成績いいから、それほど心配無いでしょうけど」

「ノートのコピーとかは全部アスカが用意してくれてたし、これから少しづつ勉強する
さ」
ほんの三週間前 俺にとっては実質一週間ぐらい前だが、世界の滅亡をかけて死闘した
というのに、今はこうして学校の勉強の話をしている その事が少し不可解に感じた。

「そうよね けど、NERVの方にもこれまで以上に出向かないといけないんでしょ?
ほんと大変よねぇ……」

「今日も授業が終わったらNERVに行く事になってるんだ 四人体制になったから
シンクロテストや実験も二人づつする事になったしね」
「そらほんまに大変やなぁ……今はいいけど来年の受験とかどないするんや?
けど、そのままNERVでもする事になるんか?」トウジが疑問を投げかけて来た。

「まだ何も考えて無いけど高校は行くつもりだよ 夜学にしようかとは思ってるけど」
「じゃアスカも夜間に? あ アスカはもう大学卒業してるのよね中学は義務だけど」
「日本の大学院に編入しようかと思ってるんだけど……」
普段の快活さとは裏腹に未だにアスカの表情は暗かった。

「今でも給料貰ってるんだろ? なら半分NERVの職員みたいなものだよね」
「給料ってどれぐらいくれるんや?」
トウジとケンスケは場の空気が読めず見当違いの話題を引っ張り出して来た。

「さぁ……スーパーバイザーになった時 自分の口座作って貰ったけど、
通帳記帳してないな……パイロットになってからは危険手当とかも付いてる筈だけど」

「なんや 自分の貰ろてる給料の額も知らんのか……なんちゅうか無欲というか……
おっと午後の授業始まってまうがな いこいこ」
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響き、俺たちは教室へと向かった。

 そして放課後……俺とアスカはNERVに向かった。
時間には余裕があったし、急いでいる訳では無かったので俺たちは電車に乗りNERV
に向かっていた。 まだ帰宅ラッシュには早い事もあり、俺とアスカは並んで座る事が
出来た。
「なぁアスカ……何か気がかりな事でもあるのか?」恐らく自分の事が原因だろうとは
思ったが、そう聞く訳にもいかず、俺はさりげなくアスカに問いかけた。
「ごめんなさい……こうして横に繁智がいるのに……こんな不安な顔してちゃ駄目よね
ちょっと今朝から気分がすぐれないだけなの……今回の事で不安が無い訳じゃ無いけど
それは繁智がちゃんと説明してくれたし…」来日した頃と比べるとまるで別人のように
アスカはしおらしくなって来ていた。
 一昨日の夜 俺はアスカに直接シンクロの事も話し、慣れればシンクロ率を上げすぎ
ないように出来ると思うから心配しないようにと説明してはいたのだが……
「今日の実験 休んだ方がいいんじゃ無いか?」
「大丈夫 今は少しマシになってるし」
その後は会話が続かず 俺は電車に揺られて考え事をしていた時、
俺の耳に少し離れた席にいるサラリーマン二人組の話が漏れ聞こえて来た。

「なぁ聞いたか?吉住 本社移転するって噂……」
「ああ聞いたけど、本当かねぇ 二年前に松代から移って来たばかりだろ?」
「この間の事件で社長の姪御さんが20針縫う怪我したんだと……それで移転を
考えてるってのがもっぱらの噂だけど」
「けど、どこに移転するにせよ 完全に安全な場所なんてもうありえないと思うが」
「何せ平野と言う平野はほとんど水没してるから、移転先も限られるしな……」

 その二人の会話を聞いて、俺たちにはもう後が無いんだと言う事を実感した。
破滅の足音はすぐ後ろにまで追いついて来ているのだと……
「…………」俺は頭を振ってマイナスなイメージを追い払った

 学校を出て10分程で俺とアスカは更衣室の辺りまで辿り着いた。
「トイレ済ませておくよ」 俺はプラグスーツに着替える前に小用をしておく事にした。
更衣室に一番近いトイレに入って俺が小用を足していると、背後から誰かが近づいて来た
「おお 吉田君か これから実験かね?」 
気さくに冬月副司令が横に立ちチャックを下ろした
「はい そうです」
「そういえば入院中一度も見舞いにも行けなかったな なかなか予定が詰まっててね」
「いえ……ところで役員用トイレみたいな物は無いんですか?」
「ん? 一つの場所で落ち着いてる訳じゃ無いから行く先々にそんな物作ってたらスペ
ースと費用の無駄だよ 司令室の近くにあるトイレは私と碇以外は近づいて来ないがね」
「この間の事で少しお話しておきたい事があるんですが、明日にでもお時間頂けません
か?」俺は手を洗いながら副司令に話しかけた。 シナリオから外れた事と、俺と四号
機に不信感を抱いているだろう事を思い、俺は今のうちにごまかしておこうと思ったのだ。
「明日かね……明日は昼から西地区の見回りでね……ま 赤木君にでも言って君が本部
にいる時に私の予定が開いている時って事でいいかね?」
冬月副司令は上等そうなハンカチをあごで挟んで手を洗いながら言った。
「ええ それで結構です それでは失礼します」
「ああ……」

 俺は更衣室で着替えながら何かひっかかるものを感じていた。
「西地区……西地区 西の第八管区!」
俺は赤い海で得た情報で冬月副司令がゼーレに拉致された時の事を思い出した。
そうだ 何故忘れていたんだろう ここで加持さんを止める事が出来なければ、
全てが無駄になってしまう 俺は携帯電話を取り出して、石川氏から聞き出して
おいた加持さんの電話番号をメモリーから引っ張り出した。




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第48話 終わり

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