天国と地獄 もしそのような物がこの世に存在するとすれば、ここにあるのかも知れない願わくば 昼までには意識を取り戻したい そう思った次の瞬間
俺はアスカにより強く締められ意識を完全に失ってしまった。
……………
結局俺が意識を取り戻したのは姉さんが帰って来た12時半であった。
完全に意識をうしなっていた俺は鬼のような形相の姉に起こされたのだ。
アスカはアスカで俺が起こそうとした事を全然覚えていないらしく、
俺はその日の夜まで姉にからかわれ続けた。


【変革を求める者】

外伝1「今日からは… Dパート」
*本編34話を読んでおいて下さい。


「ふぅ……」 まだ朝の6時半だと言うのに眼を覚ましてしまった僕は
取り敢えず部屋を出てトイレに向かった。
そして、今日の朝食の下準備をする為、リビングを横切ってキッチンに向かった。
いや、向かおうとしたが リビングに敷いた布団で寝ている綾波に気がついた。
エアコンは寝つくまでしかセットしてなかったせいか、
薄い毛布を綾波は足元に放り出していた。
そして、皺にならないようにとミサトさんが脱がせた制服は頭もとにたたまれていた。
寝間着が無い為下着姿で寝ている訳で、僕は慌てて毛布を綾波にかけてキッチンに向かった。

キッチンで茹でたじゃがいもの皮を剥いていると、
綾波が暑いのか また毛布を蹴飛ばしてしまっていた。
リビングの方に向けてキッチン内の流しやガス台などを設置している為、
寝ている綾波の姿は顔を上げると自然に眼に入ってしまうので……眼の毒だった。

「起こすのも可哀想だし……」僕は仕方なくもう一度毛布をかけにいった。
そして、暑いのが原因だと思った僕はエアコンのリモコンを探して綾波に背を向けた。

「碇君……」 その時 かぼそい声で僕は綾波に声をかけられた。
「何? 起こしちゃったかな」リモコンを操作してエアコンを動作させて僕は振り向いた。

だが、綾波はさっきと同じように微かな寝息を漏らしていた。

「もしかして寝言? 寝言に返事したらいけないんだっけ」
僕は小声で呟いた。

「碇君……」 そしてもう一度綾波が小さい声で呟いた。
僕は綾波が本当に寝言を言っているのか監察する為、片膝をついて綾波を見下ろした。

「好き……」 綾波がそう呟いた瞬間 僕は胸を締めつけられたかのように思った。
実際に心臓が収縮したのかも知れないけど、本当に胸を締めつけられるんだ
と僕は思った。 そして、寝言で僕の名を呼び 好きだと言ってくれる綾波への思いが
呼吸をする度に膨らんで行き、僕は寝ている綾波の手をそっと持ち上げた。
僕は綾波の右手を左手で持ち上げて宣言した。

「綾波……ちょっと頼りないかも知れない僕だけど……君の事を……ずっと守るよ」
そして 僕は綾波の手の甲にそっとキスをした。

 その後はエアコンを付けたおかげか、綾波は薄い毛布を被ったまま寝ていてくれた
ので僕は中断していた料理を再開した。


一時間後……

ポテトサラダとチーズオムレツにクロワッサンと言うメニューで朝食を摂った後、
迎えが来たので、僕は綾波と父さんが迎えに寄越した車で近くのNERVの施設
に行き、ツインローターのNERVのヘリに乗り込んだ。

父さんは仏頂面で腕を組んでヘリの座席に座っており、僕たちが乗り込んだ事にも
意識してか気づかないふりをしていた。

ヘリで15分ぐらい移動し、第三新東京市の外れにある墓所に僕たちは降り立った。
父さんは秘書だと思われる事務官風の女性から花束を受けとってヘリから降り立った。

僕とレイは無言で父さんの後をついていった。
最後に墓参した時はまだ子供で場所もはっきりとは覚えていないからでもあった。

父さんは黙って花を母さんの墓前に供えたが、手を合わせる事もしなかった。
意味の無い事だと思っているのだろうか……
僕は黙って手を会わせると、レイも僕を真似してそっと手を合わせた。

「御線香は?」 何か足りないと思っていたがやっと何が足りないのかが分かった。
「忘れた……」 父さんはムスっとした顔で応えた。 花を用意しただけマシか…

「ミサトさんから話はして貰ったけど、もう一度言うよ 父さん」
「ん?」 父さんは振り向いて問い掛けた。
「僕は……レイをあのままにして置けないから、一緒に住む事にしたよ」
「……そうか」
父さんは淡々とした表情で僕らを眺めた後、ふっと母さんの墓標の方を向いた。

僕たちは母さんのお墓を後にしてヘリを止めてある広場に戻って来た。

「私はすぐに帰らないといけないが、おまえたちはどうする?」
「近くに駅あったよね 僕たちは電車で帰るよ」
「そうか……ではな」 そう言って父さんはヘリに乗り込んだ。

ヘリのローターが巻き上げる砂埃を避ける為、僕たちは少し離れた所で
父さんの乗ったヘリが離陸して行くのを見た。

かなり前からの懸案事項だった父さんを交えた墓参りを済ませ、
僕は少し解放されたような気分で墓所の階段を降りていた。

「そうだ 綾波 これから引っ越しの準備手伝おうか」
その僕の問いに綾波は足を止めて少し表情を硬くした。
「え、どうかしたの? 何か悪い事言った?」
とそこまで言って僕はようやく綾波の不機嫌の理由が分かった。

「引っ越し手伝うよ 行こうレイ」
父さんと別れて少し気を抜いていたせいで、
今日からレイと呼ぶ事にしていたのを忘れていたのだった。 
綾波がそう呼ばれる事をどう感じるかな と少し心配していたが杞憂だったようだ。

綾波は僅かに微笑んで、僕の手を取り 階段を足並み揃えて降りていった。

守るべき者を得た僕は今日から一人の男として生きていく事を決意した。

…………
…………

三日後の綾波の引っ越しには吉田君とアスカも手伝ってくれて、
綾波の荷物が少なかった事もあり、夕方の二時間程で完了してしまった。
そこで、綾波の事をレイと呼ぶ僕を見て吉田君とアスカは少し驚き、
ミサトさんは食事が始まるまで僕とレイを冷やかし続けたのであった。




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どうもありがとうございました!


外伝1・Dパート 終わり

本編第35話 に続く!


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