「そうそう 服取りにいった後はシンジ君と綾波が食事作ってくれるそうだから、
付き合わない? 二人分増えるって電話しとくからさ あの二人の事でも話あるしね」
「じゃ、お言葉に甘えようか アスカ」
「反対する理由は無いわ で、四年後って何? なこうどって何なの?」
「ドイツ語で何と言うかは 私にもちょっと分からないわね
 ま、それは吉田君に教えて貰いなさい」
「なんか凄く気になるんだけど〜」アスカは頬を膨らまして怒った。
「あ、いつまでも車止めとけないから 早く行きましょ」
「了解〜 ところで今夜のメニューは何なの? お昼焼きそばしか食べて無いから
お腹空いちゃった」アスカも気に病んでいた事から解放されたのか笑顔を見せていた。


【変革を求める者】

外伝1「今日からは… Bパート」
*本編32話を読んでおいて下さい。


「えーと マイワシあるかな…」
鰯のハンバーグと鯖味噌がメインなので、僕は綾波を連れて少し離れた所にあるが
鮮魚がよく揃っているスーパーの鮮魚コーナーを歩いていた。
セカンドインパクトで水位が上昇したため、魚が居着く漁場が変わった事もあり、
昔なら格安で買えた マイワシやサバも現在では高級魚に近い存在になっていた。
「碇君……これは?」 綾波が僕の腕にそっと触れて注意を引いて言った。

「あ、それはウルメイワシだね そういえば、先生が ウルメの干物を焼いたのが
大好物だったな……」ここ最近”先生”の顔を思い出してもいなかったのを思い出し、
僕は内心苦笑した。 父さんに捨てられてから今まで育ててくれた人なのに……

 綾波がきょとんとした顔で僕の説明を聞いていた。 ”先生”の説明をしようかと
思ったが、肝心のマイワシのパック入りを見つけたので、僕は綾波にパックを見せた。
マイワシ5匹入りのパックで980円もするので、もう1パック買うか僕は悩んでいた。
その時、懐に入れていた携帯電話がぶるぶると震え、着信を報せて来た。
「はい 碇ですが あ、ミサトさん? ええ丁度聞こうと思ってたんですが、
5匹入りで980円なんですけど2パックにします? え、吉田君とアスカが
じゃ3パックにしておきます」 

 急遽、吉田君とアスカも夕食を一緒に食べる事に決まったので、僕は並んでいる
マイワシのパックで良さそうな物を選んで三つ篭に入れていった。

「じゃ、次はサバを選ぼうか どれがサバだか分かるかな? 綾波」
僕は綾波への教育も兼ねてスーパーで必用な買い物を済ましていった。

 約15分後……両手にスーパーの袋を下げた僕は綾波と共に帰路についていた。
「魚偏に弱いと書いて 鰯と書くぐらいだから、早く食べないとね
そうだ つみれにもするかな……」
「つみれって何? 碇君」
「口で説明するの難しいから、作りながら説明するよ」
来週の半ばぐらいからは、こうして毎日綾波も一緒にご飯を食べる事になる訳で、
肉抜きの料理のレパートリーを頭の中で考えていた。

 5分程歩いた時、手首にスーパーの袋が食い込んで痛くなったので、
僕は足を止めて少しずらす事にした。
普段の近くのスーパーなら手首が痛くなる程の事は無いんだけど、
今日は遠い分痛くなってしまったようだ。

「痛いの? 碇君 私……持つから」
せっかくの綾波の言葉だが、缶詰やじゃがいもなど重い物も入っている袋
なので、綾波に持たせる訳にもいかなかった。
一応 僕だって男なんだし……
「大丈夫だよ ちょっと場所をずらせば痛く無いから」
「だけど……碇君の手首 赤くなってる…」

「わかったよ……じゃ、袋のそっちの取っ手を持ってくれるかな?」
僕は綾波と袋の片方づつの取っ手を持つ事にした。

 太陽が西に傾き始めた午後三時半……閑静な街並みの中を僕は綾波と
スーパーの袋と言う少々無粋な物でお互いの手を繋いで歩いていた。
いつかは……手を繋いで歩きたい と僕はそう思った……

そういえば、幼い頃 母さんに袋を持ちたいと駄々をこねて
母さんとこうして袋を二人で支えた事を ふと思い出した。
母さんの命日を目前にして、僕は久々に母さんの面影を思い出す事が出来た。

「ただいまぁ〜」カードキーを使って扉を開け、僕は綾波と一緒に袋を
持ったままリビングに入っていった。

「ミサトさん まだ帰って無いね じゃ、準備始めようか」
キッチンのサイドテーブルに買って来た材料を降ろし、
僕は今日料理で使う物と冷蔵庫に入れて置く物やストックとを
選別し始めた。

「私、手伝える事ある?」
「鰯の手開きはちょっと無理だから……このじゃがいもの皮 剥いてくれるかな?」
さすがにまだペティナイフを使いこなせる訳でも無い綾波に包丁で剥かせるには
無理があるので僕は皮剥き機を綾波に手渡していった。

もくもくと作業を始めた綾波を時々気にしながらも、僕はマイワシを手開きにして
いった。

 手開きを終えたマイワシを俎板に並べる頃には、綾波はもう二個分のじゃがいもの
皮を剥き終わっていたので、僕は綾波に指示して水洗いしてからすりおろして貰った。

 そして包丁で叩いたマイワシとすりおろしたじゃがいもと味噌と生姜ひとかけら
と胡椒を叩いたイワシと一緒にすり鉢に入れて混ぜ始めた。
一人3切で5人分だから、結構混ぜるのに苦労した。

パン粉を付けて揚げても美味しいけれど、今日は綾波に手伝って貰う事にしたので、
フライパンで焼く事にした。 焼くのは食べる直前なので綾波には見学して貰い、
僕は鯖味噌を創る事にした。 酒の肴としてはミサトさんのお気に入りなので、
よく作っているので、僕はてきぱきとサバを三枚に下ろした。

そうこうしている内にサバの仕上げも終わり、後は煮るだけになったので、
僕は椅子に腰かけて額の汗を握った。

「クゥエ?」 その時 専用冷蔵庫からペンペンが顔を出した。

「やぁ、ペンペン 魚の匂いで目を覚ましたのかい?」
「クゥゥゥ」 まるで言葉が分かるのかペンペンは首を縦に振った。
「じゃ、イワシの頭でも食べるかい? 普段はワカサギだけど、野生のペンギン
はイワシも食べてるもんな……」 僕は俎板の隅によけてあったイワシの頭を
ペンペンの餌入れに放り込んだ。
ペンペンは即座にくちばしでイワシの頭を飲み込んだ。

綾波はこれまでペンペンとあまり接する事が無かったので、
珍しそうにペンペンを見つめていた。
「撫でてもいい? 碇君」
「ペンペンの食事が終わってからなら大丈夫だよ 食事中は駄目だけど」

10尾分のイワシの頭を食べたペンペンは満足そうに身体を揺らしながら
冷蔵庫に帰ろうとし始めた。

「ペンペン おいで」僕はペンペンを呼び止めて こっちに来るように手招きした。

近寄って来たペンペンに綾波はそっと手を差し出し、頭や翼に触っていた。
気持ちいいのか、ペンペンも何度か短い鳴き声をあげていた。

数分後 すっかり懐いたペンペンを綾波は腕に抱いていた。
「ミサトさんや吉田君とアスカ もうそろそろかなぁ……」
そういえば、僕は何故アスカの事を呼び捨てにしているのだろう
じゃ何と呼べばいいのか……惣流さん? アスカさん?
どれもしっくり来ない 外国人だからそういう事にこだわらないのだろうか
親友の恋人を呼び捨てにするのはいかがなものか……だけど、エヴァのパイロット
として、作戦行動中や訓練中に惣流さん やアスカさん と呼ぶ事は出来ないし……

ふと横を見ると綾波はペンペンを抱いたまま、僕の横顔を見ていた。
視線が交錯し、綾波は僅かに頬を赤くして横を向いた。

隣に綾波がいるのにアスカの事を考えるのは止そう そう僕は決意した。


「ただいま〜 遅くなっちゃったわね あーいい匂い」
「お邪魔します」
「ここがミサトの部屋? 意外に片づいてるじゃない」
「シンジがマメに片づけてるんだろう」
「なるほど そっか」
「ちょっとちょっとぉ まるでそれじゃシンジ君が保護者みたいじゃ無い」

玄関の辺りが賑やかになったので、僕は立ち上がり皆を出迎えた。




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どうもありがとうございました!


外伝1・Bパート 終わり

本編第33話 に続く!


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