頑固な父と小姑(?)な姉に監視されると言う幾分トホホな状況ではあるが、
同じ屋根の下でアスカで暮せる事は嬉しかったので、俺は受け入れる事にしたのだ。
「まさかこんな事になるとはねぇ……」 アスカが住む事になった部屋で荷物の整理をしながら
俺とアスカは奇しくも同時に同じ言葉を呟き、その事に気づくと俺達は同時に苦笑を漏らした。

尚、第一回機体相互互換試験 では今回零号機の暴走は無かった。
シンジとレイも前回より親密になったからかも知れない……


【変革を求める者】

第28話 「嘘と沈黙 Aパート」


 今日はNERVでのシンクロテストも無く、
俺達はNERV内であてがわれた練習場で空手の練習を行っていた。
アスカと同居を初めてから3日後の事であった。
実はまだこの事はシンジとレイにも報せてはいなかったので、
俺とアスカは素知らぬ顔をして練習を続けていた。

 シンジを心身共に強くするのが目的で始めたトレーニングではあるが、
正直これほどまで長続きするとも思わなかったし、レイの参加も予想外であった。
そんな事を考えながら俺は自らも中段の突きを繰り返しながらシンジを見ていた。

「うん シンジ 今の中段突きはいい感じだ 風を切るいい音がしたし」
トレーニングを始めたばかりの頃はかけ声も弱々しかったシンジも
基本の中段突きは時に見るべき物を見せていた。 その肩に日本の いや世界の未来が
かかっている事を自覚し始めた頃から、シンジは強くなり初めていた。

「ほんと? 吉田君 拳を止めた瞬間にビシっと決まったような感じはあったんだけど」
シンジは中段突きを止めずに顔だけ向けて答えた。

「私はどうなのよ 繁智」 アスカも手を休めずに中段突きを放ちながら問い掛けた。

「アスカは言う事無いよ 中段の突きはほぼ全ての拳を使う格闘技の基本だからね
マーシャルアーツの素養のおかげだと思うよ ただ、寸土めの為に拳を撃ちっぱなしに
しない独特のやり方に慣れる必用があるね」

「なるほど…空母でやったマーシャルアーツも無駄じゃ無かった訳ね」
アスカは納得したのか中段突きに集中し初めていた。
アスカの流れるようなプロポーションに一瞬気を取られた俺は その事を忘れる為にレイの動きを観察した。

「うーん 綾波さんは 毎回計ったように正確な拳を放ってるけど、
時には気合いを入れた一発を混ぜてみるといいよ 5回に一回とか」

「気合い? 気合いって何? 出力を上げればいいの?」

「うーん そうだな この一発が止めの一発だと思って放てばいいよ」
俺の言葉に頷いたレイは言われたように5回に一回程度 渾身の力を込めた拳を発するようになって来た。

「ふむ……基本は皆出来たかな じゃあと20回振って休もう」

すでに先程までだけで中段の正拳突きを200回程やっていたので、
皆 汗を拭きながら畳に座り込んでいた。

「一休みしたら 蹴りの練習に入る前に 俺が作戦部に提案した訓練をやって貰うから」
俺はそう言って用具置き場になっている隣室に入って行こうとした。

「何?隣から何か持って来るの? 手伝おうか?」
汗は拭きおえたもののまだ少し息が荒いアスカが立ち上がって言った。

「そうだな 頼もうか」
シンジとレイはアスカ以上に息を乱しているし、これから運ぶ物は重いので俺は頼む事にした。

隣の薄暗い用具室に俺はアスカと二人で入り、次の練習で使う立式サンドバッグを引きずり出した。
すると からからと言う扉の締まる音がしたので、俺は振り向いた。
「ん?扉閉めたのか? これから運び出すんだけ……んっ」
俺はマットの上に押し倒され、アスカに唇を奪われた。

俺は一瞬慌てて身体を離そうかと思ったが、アスカが吉田家にステイしている為、
あれ以来唇を重ねていないので、俺はアスカの肩を抱き 受け止める事にした。

二分程抱き合っていただろうか、アスカが口を離し とろんとした眼で俺を見つめた。
「あのな ここ通風の為に上と下が隣に繋がってるんだぞ?」
暗に先程アスカが俺を押し倒した時の音が漏れてる事を俺はアスカに諭した。

「え、そうなの?」シンジやレイに知られるのは少し恥ずかしいのか
アスカはそろりと立ち上がった。

「じゃ、これ持って行こう」 俺は立式サンドバッグに手をかけて言った。

サンドバッグは上から釣るタイプで無く、サンドバッグを支える台車付き
なので、廊下に出せば俺一人で引っ張れそうなので、俺は用具室の片隅にある
ケースを指差し、それをアスカに持って来て貰う事にした。

「これ何よ 結構重いわね」アスカはジュラルミンのケースのキャスターを
転がしながら用具室から出てきて扉を閉めた。

「もうすぐわかるから…」俺はあえて秘したままにして、シンジ達が待つ道場に
サンドバッグを突いていった。

道場の四辺は板張りであり、俺は板張りの部分から外れないようにサンドバッグを
突いていた 途中でシンジが立ち上がって手伝ってくれたので、二分程で
設置する事が出来た。

「ああ重かった」 畳の上でキャスターを転がす訳にはいかないので、ジュラルミンのケース
を抱えていたアスカがケースを畳の上に置いて嘆息をついた。

「ありがとう アスカ」
俺はそう言ってジュラルミンのケースを開けた。

「これ……パレットガン?」 シンジが覗きこんで手に取った。
「ああ エヴァが装備している物をスケールダウンした物だ」
「結構重いね」シンジがパレットガンを抱えて言った。
「重量も正確にスケールダウンされてるからね 筋力の事を考えて
鉛の重りを付けたり外したり出来るようにして貰ってるよ」

「あれ? これ弐号機のパレットガンと少し違うわよ?」
アスカがパレットガンの肩受けの部分を見て言った。

「ああ、それは俺の提案で弾が無くなった時 その銃のストックで使徒のコアを叩き割る
為に、プログナイフと同じ金属の部分が追加されたんだ 普通に構えるぶんには邪魔に
ならないと思うけど… でエヴァが使うパレットガンも今改修中だよ」

「へー 凄いわね さすがはスーパーバイザー」
アスカが早速パレットガンを構えて言った。
「吉田君って前から思ってたけど凄いよね 僕と同い年には見えないよ
いや吉田君はもう15歳だっけ なんか同じ年月生きて来てても密度が違うんじゃ無いかな」
シンジが俺を見ながら少し嬉しそうに言った 頼られるのはいい気持ちだが、
俺はシンジにもっと強くなって欲しかった。

「で、もうわかると思うけど、あのサンドバッグに書かれた○ が使徒のコアだと思って
銃のストックを使徒のコアに叩きつける訓練をやって貰うよ 銃は三人分あるけど、
エヴァの強化された筋肉と違って君たちは生身だから 重いと思ったら鉛の重りを外して
使いやすい重さに調整しておいてくれ」

三人は頷いてストックの調整をしていた。

「アスカは鉛一枚外しただけか それで大丈夫か?」
「船の中のジムで筋力は鍛えたから大丈夫よ」

「じゃアスカの銃を借りて俺が模範演技をしてみせるよ 別に俺のやり方にこだわる必用は無いから
個々の戦い方に合わせてアレンジするなりしてくれ」
俺はそう言って まずは普通に銃撃するようにパレットガンを構え、使徒に見立てたサンドバッグの前
約2メートルの位置に立った。 そして飾り物のトリガーを引き、弾が無くなったと仮定し、
すかさずグリップを握りなおし、ストックを使徒に叩きつけるべくパレットガンを構えなおして、
使徒の懐に入り パレットガンのストックを丸い円の中に叩きつけた。

 その瞬間 ドスっと言う音がして、俺が打ちつけた部分が凹んだがみるみる内に元に戻っていった。

「練習無しで決めるなんてやるわね 繁智」 アスカは拍手をしながら言った。
「本当 吉田君がエヴァのパイロットだったら心強いなぁ」

「じゃ交互にやってみて 一人3回づつ交代で」

「じゃ私から」 アスカは俺の動きをトレースしたが最後の体重移動がうまくいっていなかった。

俺は三人の練習を少し離れた所で見ながら考え事に耽っていた。

心身共にシンジも強くなってきたとは言え、俺の存在が逆にシンジの自立心にプラスにならないのでは
無いかと俺は思い、対策を至急立てるべきだと思い立った。




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第28話 終わり

第29話 に続く!


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