「正拳突きだ! それしか無い!」
俺は碇シンジに伝われとばかりに正拳突きのイメージを思い描いた。
「うわぁぁぁー」
シンジはそれを受けて半ば自棄になりナイフを捨てて右拳でシャムシェルのコアを殴った。
その一撃でシャムシェルのコアは光を無くし、初号機も動作を停止した。
「俺は……何も出来なかった……方法が違うだけで結果がどう違うと言うんだ……」
俺は暗くなったプラグ内でシンジが泣いているのを見てそう思った。
【変革を求める者】
第2話 「修行」
蝉の鳴き声が耳ざわりな程に感じていた。
なのに自分の身体は思うように動かないし、
目の前の物体が鈴原なのか相田なのかも分からない
五感のバランスが失調してしまっているようだ。
停止した初号機から救出された俺達は黒服の男数人と技術者に囲まれてLCLを吐いていた。
胃液まで吐いたのでは無いかと思って口元を拭った時、
ようやくLCL酔いとでも言えばいいような現象から解放された。
「分かっていると思うが、そこの民間人三名! 我々に同行したまえ。」
俺達の症状が収まるのを待っていたのか、黒服の男の一人が前に進み出て言った。
俺は頷く事で同意を示した。
「そこの坂を上がった所に車を止めている。 ついて来るんだ」
エヴァ初号機が丘の斜面で動きを止めてしまった為、俺達は県道まで歩く事となった。
銃こそかまえていないものの、逃亡でも図ろうものなら懐から剣呑な物を取り出すで
あろう事は想像に難くなかった。
ようやく県道に出た俺達は二台に分乗してNERV本部に連行される事になった。
ゲートに辿りつくまで10分 カートレインで下降する事10分 NERV本部内を
歩かされる事10分 取調室とでも表現すればいいのか、窓も無い殺風景な部屋に
俺と鈴原と相田は案内された。
シンジはエヴァの外づけバッテリーが届くのを現場で待っているらしい。
少なくともシンジが責められないと言う事で俺は少し安心出来た。
少しして、責任者らしき男が俺達の前に10枚はありそうな書類を差し出した。
「機密保持の為、御協力願います。」
慇懃無礼と言う表現が一番しっくり来るであろう。
お願いしているかのような物言いではあるが、質問も反論も許さない雰囲気が漂っていた。
書類は予想していた通りのもので、暗に約束を破れば芦の湖に浮かぶ事を示していた。
その後、一人づつばらばらにされた後、事の経緯を話す事となった。
俺は事実の通りを喋ったが、二人を助けに行ったのは自分の意思である事を強調した。
結果、鈴原と相田が全面的に非を認め、俺が二人を追いかけて来た事を供述した為、
俺はその後の鈴原と相田が説教のフルコースをくらっていた頃には解放されていた。
とは言え、まだNERV本部から出る事は許されておらず、
自動販売機でジュースを買ってそれを飲みながら学校長が迎えに来るまで待つ事となった。
「あら、見かけない子ね…… ああプラグの中に入ってた子ね?」
白衣を着ていても着ていなくても、科学者だと分かる雰囲気の女性が立ち止まって言った。
「あなたが赤木博士ですか はじめまして 吉田繁智と言います」
いつも何でも知っているとでも言わんばかりの態度の赤木リツコに先制パンチを浴びせた。
「どうして、私の名前を知っているの? あなたの御両親もNERV勤めなの?」
その効果は抜群で、赤木リツコは頬の筋肉をぴくぴくさせながら答えた。
「いえ、そうではありません それよりお話しがあります」
俺は意識して不敵な表情を見せて言った。
「何かしら……」赤木リツコはどう対処していいのか困窮しているようだった。
そして、三つの束に分けられていた書類の下の端の書類を上の端に移動させていた。
恐らく俺の情報を確認しているのだろう。
「エヴァンゲリオンの操縦者である碇シンジ君の事ですが、NERVでは格闘技の訓練を
させていないようですが、何故です? 武器を失った時にどう対処せよと?」
「うっ……それは確かに……もしかして初号機が拳でシャムシェルを倒したのは、
君の進言なの?」 赤木リツコはデータベースから引き出したらしい俺の情報を
まとめた用紙をちらちらと見ながら言った。
「ええ、そうです。 無論考えて無かった訳は無いですよね 気弱なシンジ君が、
あの黒服のエージェントみたいな人に習うって訳にもいかなかったでしょうし。」
俺はリツコに華を持たせる言い方をした。
「ええ……前から考えてはいたんだけど……まだ訓練も始まったばかりだし」
リツコは案外単純なのか、俺が向けた水に素直に反応した。
「さっきも言ったように強面の職員から習うのでは効率が良く無いでしょうから、
私が友人として碇君に空手を教えましょうか? 無論瓦を素手で割る事にエヴァの操縦者
としては意味が無いですが、体さばきなど、どれを取ってもメリットばかりです。」
「空手一段で……御父様も空手の御指導をされてるのね……」
リツコはもはや俺の資料を見ている事を隠しもせずに答えた。
「ええ、俺の通ってる知り合いの道場なら都合も付きます。 碇君の訓練の無い日にでも
スケジュールを組んでみてはどうでしょうか」
俺は碇シンジの生存率を上げる為と、心と身体を鍛える事によってサードインパクトを
あのような形で起こさせない事を心に決めたのだ。
「一応本人の許諾を得て、それから連絡するわ その道場にも話を通しておいてね」
俺は二言三事 赤木リツコと言葉を交わして、赤木リツコと別れた。
よっぽどMAGIの進化育成プログラムを書いておけと言いたかったのだが、
警戒されては、芦の湖に浮かびかねないと思い、断念した。
そして、翌日 俺は普段より少し早めに学校に来ていた。
「吉田君 だったよね 昨日はその……ありがとう」
トイレから出た所で、俺は碇シンジに話しかけられた。
「いや、こっちこそ迷惑かけちまって……」
「吉田君がいなかったら、今ごろ……本当にありがとう
それに空手教えてくれるんだって?」
碇シンジは昨日より遥かにいい表情をして言った。
「武器を失った時には役に立つだろう? もっとも腕や足も武器と考えるのが空手
なんだけどな……じゃ、今度の日曜にでもちょっとやってみないか?
日曜の午前中なら貸し切り状態だから。 まず受け身も覚えて貰わないとね」
「吉田君さえ良かったら、お願いするよ 道着は学校指定のでいいよね?」
「それでいいよ 終末にまた連絡するよ」
俺はようやくシンジの役に立てる事が嬉しかった。
「いや〜親まで呼び出されそうになって焦ったよな」
「まったくやで ワシんところはおとんもおじいもやからなぁ……」
その時、鈴原と相田が二人して愚痴りながら現れた。
「おっ吉田やないか 碇も……」
俺達に気づいた鈴原は少し表情を硬くした。
「おい……何か言う事あるんじゃ無かったのか」
小声で相田が鈴原を肘でつつきながら言った。
「あ……碇……いや碇君 わしが悪かった。 お前の気持ちも考えずに……」
鈴原は頭を下げて言った。
「あ……いや、その…… そんなに気にしてないから」
シンジは鈴原が頭を下げたのに面食らってるようだった。
「俺としては無抵抗なおまえを殴って殴りっぱなしとはいかんのや 一発殴ってくれや」
鈴原は顔を上げて言った。
「え、殴るの?…… 僕 暴力は嫌いなんだ」
シンジは対処に困って苦笑した。
「じゃ、俺が代わりに殴ってやろうか?」
俺は拳の空手タコをさすりながら言った。
無論本意では無かったのだが。
「そやな 腕に自信のあるもんが自信の無いもん殴ったんや
吉田に殴られても文句は言えん」
覚悟を決めたのか鈴原は堂々と前に進み出た。
「それが分かっただけでも、大きな進歩だよ」
俺は鈴原の肩をぽんぽんと叩いて言った。
「僕 吉田さんに空手を習う事にしたんだ その内実験台になって貰うから」
シンジは人に拳を向ける事が出来る訳無いのを知りながらもそう言って笑った。
「そうなんかい ええのぉ わしも本格的に習うてみたいのぉ」
「俺の知り合いの道場なら問題無いから遊びに来いよ」
「そやな 妹の怪我が治ったら遊びに行かせて貰うわ」
「一件落着だな めでたいめでたい」
相田も笑みを漏らして言った。
「空手……日本古来の武道……エヴァを有効的に運用するのに……有益」
と教室を覗きこんでいた綾波レイが呟いていた事を後で知る事になった。
御名前
Home Page
E-MAIL
ご感想
今のご気分は?(選んで下さい)
4話すっとばしかい
モテモテ要素が無いぞ
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
内容確認画面を出さないで送信する
どうもありがとうございました!
第2話 終わり
第3話
に続く!
[第3話]へ
[もどる]